捨てられ才女はどうやら繁栄の切り札だったようです~新生活を謳歌していたら、記憶チートで追放先が大発展していました~
4.再会
ヴォルデとエベラルド辺境伯領は鉄道で繋がっている。なので面会を求める手紙のやり取りも非常に早い。
手紙を出してからすぐレオールの返事がきて、私たちは面会できることになった。
数日後、私たちはなけなしのお金を投じて鉄道に乗り込み、帝国へと向かう。
(帝国へ行くことは一応、王都にも報告を入れておいたし……多分大丈夫よね)
ラッセリア公国の地方領主には隣国との簡易な外交なら許される。
時候のやり取りとか、特産物の交易とか。色々と上限はあるが細々としたやり取りまで王都の承認を得る必要はない。潤滑油的行為は地方でやれよ、ということなのだ。
私の訪問も「就任挨拶」である。まぁ、何も嘘はついていない。
普通は領主本人が向かうことはなく、使者を送るだけなのだが……そこはうやむやにして、帝国へと向かった。鉄道に乗って、数時間ほど。屋敷から数えても半日程度。
山と山に囲われた道を鉄道で抜けると、そこはもうカリダード帝国だ。
ルーインが窓から帝国の黒い森に目を輝かせる。
「うわ〜、すっごい森ですねぇ!」
「この森がカリダード帝国の代名詞でもあるわね」
尖って黒ずんだ葉とすらっとした幹。カリダード杉が延々と鉄道に沿って茂っている。
カリダードは古語で『黒の針葉樹』という意味であり、まさに帝国の大半を覆う黒の森を指し示しているといえる。
「この杉は再生力が高くて、色々な用途に使えるわ。でも近年だと蒸気機関に最適ね」
「杉を鉄の精錬やそもそもの燃料として、ですよね」
「ええ、古くから続く帝国がさらに勢いを増した要因よ」
煙を吐き出しながら進む蒸気機関車と鉄道。これらの技術は世界を一変させた。
残念ながらラッセリア公国にはカリダード杉は生えておらず、技術革新には遅れているが。
それでもなんとかしようとあがいてこのザマである……。
(はぁ、自然の中で癒されたいわね〜)
窓際で頬杖をつきながら鉄道が進むのを見守る。あと小一時間も乗っていればエベラルド駅に到着するはずだった。
静かな森とずっと続く黒の杉、適度な揺れ。
あと少ししたら平原に出て、そこからエベラルドの街だ。
少しくらい寝てもいいかと思って、目を閉じる。時間が来ればルーインかメイドが起こしてくれるだろうし。
が、そこで私はぱちっと目が覚めた。
続いている森から平原――ではなく街があった。五年前の留学の時はなかった街だった。
「お〜! 街です! ひろーい!」
「……こんなところまで?」
私は目をパチパチさせて窓からエベラルドの街並みに顔を向ける。
本当に五年前はここら一帯が平原でヴォルデと大差ない人口密度だったはず。
もちろんエベラルド辺境伯の屋敷周辺は元から比べ物にならない栄え具合だったけれど。
(嘘、いつの間にこんな発展していたの?)
ざっと眺めていると背の低い煉瓦造りではあるが、家屋が連なって途切れない。
道には人が行き交い、馬車もひっきりなしに道を走っている。
家屋の煙突からは煙が流れ、人々の喧騒がここまで聞こえてくるようだ。
特に踏切では私たちの列車が通り過ぎるのを何十人もの人が待っている。
遠くにも目を向けると、山々で作業している――あれは鉱山か。
ヴォルデの鉱業は衰退しきっているが、ここではまだまだ盛んなようだ。
「五年でこんなに変わるものなのかしら」
「徐々に家屋も密集しているような感じですね……。駅の周囲はもっと凄そうです」
ルーインの推測通り、駅に近付くにつれて家屋はさらに増えていった。
遠くには工場のような建物も見え、三階建てや四階建て――公国では王都や数個の大都市にしか見られない建造物が当たり前になっていく。
そして駅に到着すると、さらに私たちは驚いた。
人、人、人!
それに広いホームにいくつもの鉄道路線。
ルーインやメイドとともにホームに降り立ち、唖然とする。
「ラッセリアのどの駅よりも広くて混雑していませんか?」
「……そうね」
もしかするとこのエベラルドだけで、今やラッセリア公国の王都よりも大きい街なのでは?
元々、カリダード帝国は公国の何十倍も大きいはずだけれど……国境近くのエベラルドまで公国の王都に匹敵しているとは思わなかった。
駅のホームにはレオールの屋敷の方々がおり、そのまま駅から馬車に乗って街中を進む。
午後の街は本当に賑わっており、羨ましい限りだ。レオールの屋敷は小高い丘の上にある。
屋敷自体は大きいが、街の広さに比べればこぢんまりとした印象を受けた。
少なくとも彼の屋敷はラッセリアの王宮よりは小さい。カリダード帝国に入り、初めてほっとできたかもしれない。
丘の上へ行き、屋敷の前の道から馬車を降りる。白の花が咲き乱れて道を飾っていた。
そこにひとりの男が立っている。
濃い緑の髪色に甘い顔立ち。顔立ちは非常に対称的で整っており、いっそ怖いくらいだ。
帝都の夜会では多くの女性を魅了した、緑の瞳もそのままだ。
(緑の瞳――もっと鮮やかな緑だったような)
久し振りであるからレオールの瞳も変化しているのかもしれないが。
顔以外もレオールはすらりと背が高く、しかし弱さは感じられない。
神様が精密に測って身体の全てを設計したかのような……細く見える肢体でありながら、筋肉質なのが帝国軍服の上からでもわかる。
帝国でも最強と誉れ高い魔術師にして、帝国の雷光とも呼ばれる軍人。
彼の黒の帝国軍服には勲章が増えていた。
いつもぶっきらぼうでどこか不機嫌そうな彼ではあったが、実際のところは強面で誤解されやすいだけだと私は知っている。
「ようこそ、カリダード帝国へ」
「エベラルド伯様、お久し振りでございます」
ドレスの裾を持ち上げ、正式な挨拶を交わす。が、レオールは唇をやや曲げた。
「レオールで構いません。座り心地が宜しくない」
「レオール様、これで良いでしょうか。……あなたももう少し口調を砕けさせてもいいのですよ。王妃になったとはいえ、旧知の仲ですから」
「そうか……そのほうが楽だ」
レオールが息を吐く。実はこのレオール、ディルダとは遠い親戚関係で、あり得ない順位ではあるがラッセリア公国の王位継承権も保持している。
だからこのぐらいでも……。レオールの瞳が私から隣のルーインへと移った。
「隣の子は――貴殿がルーイン殿下であらせられるか」
「お見知り置き頂き、誠にありがたく存じます。私めもどうかルーインとだけお呼びくださいませ。今はコーデリア様に仕えるだけの身でございます」
「ふむ……仔細は聞いている。それが望みであれば、そのように」
さすがにレオールはルーインのことを聞き及んでいたようだ。
まぁ、接している隣国の王族の件だ。隠し通せることでもない。
「さぁ、宴を用意している。奥の間へ」
レオールに言われ、私は口を閉じた。
微妙な瞳の色合いの違い……がどうしても気になっていたのだ。
私の記憶に間違いはないはずなのに。
違和感は口に出さないと気がすまない。
瞳の色がわずかに違うのは、どういう理由か……考えるまでもなく、答えはひとつだった。
「失礼ですが、あなた様は本当のレオール様でしょうか?」
「ほう、なぜそんなことを?」
レオールが微笑む。帝国でも有数の軍人である彼には似つかわしくない。
前に会った時にはそんな笑い方をしなかったのに。
「……あなたは影武者では?」
「ふふっ、はは……やはり気が付くんだな」
レオールが嬉しそうに髪をかき上げる。何がそんなに楽しいのだろう。
「どこがおかしいと思った?」
「瞳の色と笑い方が、記憶と違います」
「素晴らしい記憶力だ。相変わらずだな」
レオールが指の先に魔力を集める。
この世界でごく僅かな者が仕える神秘の力、魔術。公国では数十人ほどしかいない。
もちろん私もルーイン、ディルダも使えない。
そんな魔術をレオールは十全に使える数少ない高位の貴族である。
レオールが指を目元に当てると、彼の緑の瞳がもっと鮮やかに変化した。
私の記憶にあるレオールの瞳だ。森に似た爽やかさと知性を感じさせる緑の瞳だ。
でもレオールの魔術は光と雷に関係する攻撃なものばかりで、そんな変装に使えるような魔術はなかったはず。まじまじと見ていると、レオールが得意そうにしている。
「君の裏をかくため練習した甲斐があった」
「そんな……ええと、事のために?」
「君は全てを覚えているからな。違和感に気付いたのはさすがだが、下らないことに全力を投じた俺の勝ちだ」
光の魔術で色合いを変えることはできる。ただ、恐ろしく高度な魔術だ。
多忙なはずのレオールが練習する価値はないように思うんだけど。
ルーインが私にこそっと囁いてくる。
「こ、こんな方でしたか?」
「うーん、前に会ったのは帝国大学なのよね。その時、彼は教員でこんな人じゃなかったような……」
私は小首を傾げる。あの時、レオールは軍学と魔術学の臨時講師であった。
厳格で物事をはっきりさせ、学生には容赦ない――でも公平でやる気のある学生を伸ばすのが得意なようで、非常に人気があった。
「笑っていたのは?」
「学んだ」
どういう顔をしていいか分からず、私は少し目線をそらした。
思ったよりもお茶目な性格だったかも。
あるいは――今、レオールは二十六歳のはず。会わなかった五年間でかなり変わったのだろうか。そんなことを考えていると、レオールが改めて手を差し出してくる。
「余興はこれくらいにしよう。そろそろ夕闇が近付く。積もる話は中で話そうじゃないか」
手紙を出してからすぐレオールの返事がきて、私たちは面会できることになった。
数日後、私たちはなけなしのお金を投じて鉄道に乗り込み、帝国へと向かう。
(帝国へ行くことは一応、王都にも報告を入れておいたし……多分大丈夫よね)
ラッセリア公国の地方領主には隣国との簡易な外交なら許される。
時候のやり取りとか、特産物の交易とか。色々と上限はあるが細々としたやり取りまで王都の承認を得る必要はない。潤滑油的行為は地方でやれよ、ということなのだ。
私の訪問も「就任挨拶」である。まぁ、何も嘘はついていない。
普通は領主本人が向かうことはなく、使者を送るだけなのだが……そこはうやむやにして、帝国へと向かった。鉄道に乗って、数時間ほど。屋敷から数えても半日程度。
山と山に囲われた道を鉄道で抜けると、そこはもうカリダード帝国だ。
ルーインが窓から帝国の黒い森に目を輝かせる。
「うわ〜、すっごい森ですねぇ!」
「この森がカリダード帝国の代名詞でもあるわね」
尖って黒ずんだ葉とすらっとした幹。カリダード杉が延々と鉄道に沿って茂っている。
カリダードは古語で『黒の針葉樹』という意味であり、まさに帝国の大半を覆う黒の森を指し示しているといえる。
「この杉は再生力が高くて、色々な用途に使えるわ。でも近年だと蒸気機関に最適ね」
「杉を鉄の精錬やそもそもの燃料として、ですよね」
「ええ、古くから続く帝国がさらに勢いを増した要因よ」
煙を吐き出しながら進む蒸気機関車と鉄道。これらの技術は世界を一変させた。
残念ながらラッセリア公国にはカリダード杉は生えておらず、技術革新には遅れているが。
それでもなんとかしようとあがいてこのザマである……。
(はぁ、自然の中で癒されたいわね〜)
窓際で頬杖をつきながら鉄道が進むのを見守る。あと小一時間も乗っていればエベラルド駅に到着するはずだった。
静かな森とずっと続く黒の杉、適度な揺れ。
あと少ししたら平原に出て、そこからエベラルドの街だ。
少しくらい寝てもいいかと思って、目を閉じる。時間が来ればルーインかメイドが起こしてくれるだろうし。
が、そこで私はぱちっと目が覚めた。
続いている森から平原――ではなく街があった。五年前の留学の時はなかった街だった。
「お〜! 街です! ひろーい!」
「……こんなところまで?」
私は目をパチパチさせて窓からエベラルドの街並みに顔を向ける。
本当に五年前はここら一帯が平原でヴォルデと大差ない人口密度だったはず。
もちろんエベラルド辺境伯の屋敷周辺は元から比べ物にならない栄え具合だったけれど。
(嘘、いつの間にこんな発展していたの?)
ざっと眺めていると背の低い煉瓦造りではあるが、家屋が連なって途切れない。
道には人が行き交い、馬車もひっきりなしに道を走っている。
家屋の煙突からは煙が流れ、人々の喧騒がここまで聞こえてくるようだ。
特に踏切では私たちの列車が通り過ぎるのを何十人もの人が待っている。
遠くにも目を向けると、山々で作業している――あれは鉱山か。
ヴォルデの鉱業は衰退しきっているが、ここではまだまだ盛んなようだ。
「五年でこんなに変わるものなのかしら」
「徐々に家屋も密集しているような感じですね……。駅の周囲はもっと凄そうです」
ルーインの推測通り、駅に近付くにつれて家屋はさらに増えていった。
遠くには工場のような建物も見え、三階建てや四階建て――公国では王都や数個の大都市にしか見られない建造物が当たり前になっていく。
そして駅に到着すると、さらに私たちは驚いた。
人、人、人!
それに広いホームにいくつもの鉄道路線。
ルーインやメイドとともにホームに降り立ち、唖然とする。
「ラッセリアのどの駅よりも広くて混雑していませんか?」
「……そうね」
もしかするとこのエベラルドだけで、今やラッセリア公国の王都よりも大きい街なのでは?
元々、カリダード帝国は公国の何十倍も大きいはずだけれど……国境近くのエベラルドまで公国の王都に匹敵しているとは思わなかった。
駅のホームにはレオールの屋敷の方々がおり、そのまま駅から馬車に乗って街中を進む。
午後の街は本当に賑わっており、羨ましい限りだ。レオールの屋敷は小高い丘の上にある。
屋敷自体は大きいが、街の広さに比べればこぢんまりとした印象を受けた。
少なくとも彼の屋敷はラッセリアの王宮よりは小さい。カリダード帝国に入り、初めてほっとできたかもしれない。
丘の上へ行き、屋敷の前の道から馬車を降りる。白の花が咲き乱れて道を飾っていた。
そこにひとりの男が立っている。
濃い緑の髪色に甘い顔立ち。顔立ちは非常に対称的で整っており、いっそ怖いくらいだ。
帝都の夜会では多くの女性を魅了した、緑の瞳もそのままだ。
(緑の瞳――もっと鮮やかな緑だったような)
久し振りであるからレオールの瞳も変化しているのかもしれないが。
顔以外もレオールはすらりと背が高く、しかし弱さは感じられない。
神様が精密に測って身体の全てを設計したかのような……細く見える肢体でありながら、筋肉質なのが帝国軍服の上からでもわかる。
帝国でも最強と誉れ高い魔術師にして、帝国の雷光とも呼ばれる軍人。
彼の黒の帝国軍服には勲章が増えていた。
いつもぶっきらぼうでどこか不機嫌そうな彼ではあったが、実際のところは強面で誤解されやすいだけだと私は知っている。
「ようこそ、カリダード帝国へ」
「エベラルド伯様、お久し振りでございます」
ドレスの裾を持ち上げ、正式な挨拶を交わす。が、レオールは唇をやや曲げた。
「レオールで構いません。座り心地が宜しくない」
「レオール様、これで良いでしょうか。……あなたももう少し口調を砕けさせてもいいのですよ。王妃になったとはいえ、旧知の仲ですから」
「そうか……そのほうが楽だ」
レオールが息を吐く。実はこのレオール、ディルダとは遠い親戚関係で、あり得ない順位ではあるがラッセリア公国の王位継承権も保持している。
だからこのぐらいでも……。レオールの瞳が私から隣のルーインへと移った。
「隣の子は――貴殿がルーイン殿下であらせられるか」
「お見知り置き頂き、誠にありがたく存じます。私めもどうかルーインとだけお呼びくださいませ。今はコーデリア様に仕えるだけの身でございます」
「ふむ……仔細は聞いている。それが望みであれば、そのように」
さすがにレオールはルーインのことを聞き及んでいたようだ。
まぁ、接している隣国の王族の件だ。隠し通せることでもない。
「さぁ、宴を用意している。奥の間へ」
レオールに言われ、私は口を閉じた。
微妙な瞳の色合いの違い……がどうしても気になっていたのだ。
私の記憶に間違いはないはずなのに。
違和感は口に出さないと気がすまない。
瞳の色がわずかに違うのは、どういう理由か……考えるまでもなく、答えはひとつだった。
「失礼ですが、あなた様は本当のレオール様でしょうか?」
「ほう、なぜそんなことを?」
レオールが微笑む。帝国でも有数の軍人である彼には似つかわしくない。
前に会った時にはそんな笑い方をしなかったのに。
「……あなたは影武者では?」
「ふふっ、はは……やはり気が付くんだな」
レオールが嬉しそうに髪をかき上げる。何がそんなに楽しいのだろう。
「どこがおかしいと思った?」
「瞳の色と笑い方が、記憶と違います」
「素晴らしい記憶力だ。相変わらずだな」
レオールが指の先に魔力を集める。
この世界でごく僅かな者が仕える神秘の力、魔術。公国では数十人ほどしかいない。
もちろん私もルーイン、ディルダも使えない。
そんな魔術をレオールは十全に使える数少ない高位の貴族である。
レオールが指を目元に当てると、彼の緑の瞳がもっと鮮やかに変化した。
私の記憶にあるレオールの瞳だ。森に似た爽やかさと知性を感じさせる緑の瞳だ。
でもレオールの魔術は光と雷に関係する攻撃なものばかりで、そんな変装に使えるような魔術はなかったはず。まじまじと見ていると、レオールが得意そうにしている。
「君の裏をかくため練習した甲斐があった」
「そんな……ええと、事のために?」
「君は全てを覚えているからな。違和感に気付いたのはさすがだが、下らないことに全力を投じた俺の勝ちだ」
光の魔術で色合いを変えることはできる。ただ、恐ろしく高度な魔術だ。
多忙なはずのレオールが練習する価値はないように思うんだけど。
ルーインが私にこそっと囁いてくる。
「こ、こんな方でしたか?」
「うーん、前に会ったのは帝国大学なのよね。その時、彼は教員でこんな人じゃなかったような……」
私は小首を傾げる。あの時、レオールは軍学と魔術学の臨時講師であった。
厳格で物事をはっきりさせ、学生には容赦ない――でも公平でやる気のある学生を伸ばすのが得意なようで、非常に人気があった。
「笑っていたのは?」
「学んだ」
どういう顔をしていいか分からず、私は少し目線をそらした。
思ったよりもお茶目な性格だったかも。
あるいは――今、レオールは二十六歳のはず。会わなかった五年間でかなり変わったのだろうか。そんなことを考えていると、レオールが改めて手を差し出してくる。
「余興はこれくらいにしよう。そろそろ夕闇が近付く。積もる話は中で話そうじゃないか」