紫陽花の短編集物語#2

声にならない、だけど伝えたい

第1話 となりのページの君へ”

図書室に置かれていた「利用者メモノート」。
本の感想やメッセージが自由に書けるようになっていたそのページに、ある日書かれていたメッセージ。
「この本の最後のページ、泣きそうになった。君はどうだった?」
それを読んだ愛は、こっそりペンをとる。
「私は3回泣きました。2ページ前の台詞で一度、ラストで一度、そして今、あなたの感想で。」
——“となりのページより”
こうして、ふたりの文字だけの交流が始まった。名前も知らない。顔も分からない。でも、そのやりとりは、なぜか誰よりも心に響いた。
【声にならない、だけど伝えたい 続く】




第2話 “本当の気持ちは、インクの中に”

季節が変わって、やりとりはどんどん濃くなっていく。
好きな映画、好きな音楽、悲しかったこと、忘れたくない景色。
想「この人、本当は俺の隣の誰かじゃないのかって思うときがある」
愛「この人の言葉を読むと、いつも少しだけ救われる」
でも、想は悩んでいた。「となりのページの君」が…もしかして誰かに“恋”をしていることに。


【声にならない、だけど伝えたい 続く】




第3話 すれ違いと、名前のないラブレター

ある日、ノートがなくなる。
図書委員の間で「もうページがいっぱいだから、新しいノートにします」と回収されてしまったのだ。
それを最後に、ふたりのやりとりは止まった。
けれど、その翌日。
愛の下駄箱に、封筒が届いていた。
そこには、ノートとまったく同じ筆跡で、たった一文――
「もし君が“愛”さんなら、俺はずっと前から、となりの席で好きでした」
——想より
【声にならない、だけど伝えたい 続く】





最終話 となりのページが、きみに重なる瞬間

愛は、想からの封筒を両手で持ったまま、足が動かなかった。
“もし君が愛さんなら”——その言葉に心が震える。
でも、それはつまり…想くんだったの?
図書室でよく見かけていた、隣のクラスの彼?
本の背表紙をそっと撫でていた、あの指先。
放課後、図書室の前——
愛は決意して、ノートを手に戻ってきた。
そこに、もうひとり、立っていた。
想「…やっぱり、君が、"となりのページ"だったんだね」
愛「……うん、想くんだったなんて、気づけなくて、ごめん」
想「気づかせたくなかった。名前よりも、心を先に見てほしかったから」
ふたりは、もう名前を知っている。
だけど、“となりのページ”だった頃の言葉を、ちゃんともう一度、伝えたくなった。
愛「…あのときの“3回泣いた”って返事、本当に私が泣いたんだよ」
想「うれしかったよ。君の言葉、いつもすこし救われたから」
その夜、愛のスケッチブックに挟まれていた手紙
「名前を知っても、僕はずっと、となりのページの君が好きだったよ」
——想
【声にならない、だけど伝えたい 完結】
< 1 / 32 >

この作品をシェア

pagetop