紫陽花の短編集物語#2
生まれた時から君が好きだった
第1話 超鈍感姫と婚約者の始まり
恋愛帝国――。そこでは、生まれた瞬間から運命の婚約者が決められる世界。
貴族の令嬢として生まれた恋佳(りか)は、穏やかで好奇心旺盛。
けれど“恋”という感情には超鈍感。誰にでも優しく接する彼女は、周囲からも慕われていた。
その婚約者、大輝(たいき)は―― 一見クールで無表情。でも、内心では恋佳を溺愛している。
頭の中は「恋佳可愛い! 恋佳尊い! 恋佳大好き!」の連続なのに、本人には絶対に悟らせないようにしている。
だって、彼女があまりにも天然すぎて…。
登校初日。貴族学園で久しぶりに再会した2人。
恋佳は「久しぶりだね、大輝くん!」と屈託なく笑いかける。
その笑顔に、心臓を撃ち抜かれる大輝。「相変わらず天使か…」と心の中で悶絶。
でも彼女は、同じクラスの男子・玲央(れお)にも笑顔で挨拶。
「玲央くんって優しそう~。仲良くなりたいな!」と声をかける。
その瞬間、大輝の中に黒い炎が燃え上がる――
「いや…待って…なんで他の男子とそんな距離近いの!?」
恋佳は大輝の嫉妬にも気づかず、学園生活を楽しみにしていた。
【生まれた時から君が好きだった】
第2話 空回りする溺愛男子、大輝の試練
学園生活が始まった初日。恋佳はさっそく、クラスメイトたちに笑顔で話しかけていた。
「みんな仲良くしようね!」と無邪気に微笑む彼女は、まるで春の陽だまり。
しかし、大輝はというと――その笑顔を他の男子に向けるたびに心がざわつく。
「俺にだけ、特別って…無理なのか? でも…恋佳はそういう子だもんな…」
その日の昼休み、大輝は意を決して恋佳に声をかける。
「恋佳、これ…お弁当。一緒に食べよ、って思って作ってきたんだ」
恋佳「えっ!? 大輝くんが!? わあ~!すごい、料理できるんだね!」 テンションMAXの恋佳。
しかし、それは“友達の手作り”への喜びレベルであって、 “大輝の想い”にはまったく気づいていない…。
大輝(心の中):「いや違うの、これは“好きな子に喜んでもらいたくて”作ったやつ!!」
恋佳「ねえねえ、この卵焼きすごく甘くて美味しい!玲央くんにも分けていい?」
大輝「……は?」
その瞬間、大輝の世界は少し暗転した。 嫉妬 × 空回り × 鈍感という三重苦に襲われた彼の試練が始まった――。
【生まれた時から君が好きだった】
第3話 嫉妬爆発!? 恋佳と玲央の距離
放課後、恋佳は玲央と図書室で楽しそうに話していた。
「この本、面白そう!玲央くんって物知りだね!」 笑顔いっぱいの恋佳の姿に、大輝は遠くから目撃してしまう。
その瞬間―― 「なんで…なんであいつは“嬉しそうな恋佳”を独占してるんだ…!?」
大輝の中で、嫉妬がついに爆発する!
さらに翌日。恋佳が玲央と勉強の約束をしたことを知った大輝は、思わず廊下で声を荒げてしまう。
大輝:「お前、玲央とばっかり仲良くしてるよな」
恋佳:「えっ…?玲央くんもいい人だし、みんなと仲良くしたいだけで…」
大輝:「俺とは…なんで違うの?」
恋佳:「大輝くんは、大輝くんだよ? 特別っていうか…幼なじみだし、安心するし…!」
その言葉に、大輝は一瞬固まり――
「特別…?安心…それって、恋とは違うんじゃ…?」
恋佳の言葉は、期待と不安を交錯させて彼の心を揺さぶる。
その夜。大輝はベッドの中で考え込む。
「俺は、どうしたら…恋佳に“好き”を伝えられる?」
一方、恋佳も少しだけ、大輝の態度に「何か変だな…」と感じ始めていた――
【生まれた時から君が好きだった】
第4話 恋佳の小さな違和感
翌朝、恋佳は登校中ふと昨日の大輝の表情を思い出していた。
「なんだろう…あのとき、少し寂しそうだった…?」
けれど、恋という感情に鈍感な恋佳は、それが何を意味するのかまでは分からない。
それでも“なぜか”気になってしまう大輝のこと――。
一方、大輝はというと、玲央との距離が縮まる恋佳に内心穏やかではない。
「早く…“俺の気持ち”を届けたい。でも、空回りしたくない…」
もどかしさと焦りを抱えながらも、今日こそはと意を決して話しかける。
大輝:「今日、放課後ちょっと時間ある?渡したいものがあって…」
恋佳:「うん、あるよ! どうしたの?」
放課後―― 大輝は、そっと小さなブローチを手渡す。それは、恋佳の好きな花を模した特注品だった。
大輝:「…この花、お前が好きって言ってたから…その、似合うと思って」
恋佳:「わぁ…すごく可愛い!ありがとう、大輝くん!」
大輝は思わず微笑む。でも、心の中は不安でいっぱい。
大輝(心の声):「ただの『友達からのプレゼント』って思ってるだろ…」
その夜、恋佳はベッドの上でそのブローチを眺めながら思う。
「…大輝くんって、なんか優しすぎるよね。昔とちょっと違う気がする。なんだろう、この気持ち…」
ほんの少しずつ、恋佳の心が“大輝=特別”へと変化を始めていた――
【生まれた時から君が好きだった】
第5話 ふたりだけの放課後、でもこれは恋じゃない?
週末の午後、恋佳と大輝は街のイベントに出かけることに。
「美術展、一緒に行かない?恋佳が好きそうな展示があるみたい」 そう誘う大輝に、
恋佳は「行ってみたい!」と笑顔で即答。
会場では、花をモチーフにしたアートや幻想的なガラス細工が並ぶ。
恋佳は目を輝かせながら、「綺麗〜!大輝くん、センスあるね!」と感激。
でも―― 彼女にとってそれは“友達との素敵なお出かけ”でしかなく、恋の空気にはまったく気づいていない。
一方、大輝は内心ドキドキしながら歩調を合わせ、「今日こそ…何か伝えたい」と思っていた。
途中、カフェでひと休み。 大輝は緊張しながら、恋佳に視線を向ける。
大輝:「…恋佳ってさ、誰かと一緒にいるとき、一番安心できるのって…どんな人?」
恋佳:「えー…誰だろう?うーん…やっぱり大輝くんかな?」
その言葉に、心臓が跳ねる大輝。でもそのすぐ後――
恋佳:「だって、大輝くんって家族みたいで安心感すごいし!」
大輝(心の声):「……いや、家族じゃなくて“彼氏枠”でいてくれ!!」
完全に「親しみ枠」に分類されてしまった大輝は、撃沈寸前。でも、それでも彼の想いは揺るがない。
その帰り道。夕暮れの空の下、恋佳はふと口にする。
恋佳:「今日はすごく楽しかったよ。なんだか…ちょっと特別な感じがした」
その言葉に、大輝の心に少しだけ希望の灯がともる――。
【生まれた時から君が好きだった】
第6話 揺れる気持ちと、現れるライバル
学園に新しく転入してきた男子――その名も 拓(たく)。 長めの前髪に、ちょっとミステリアスな雰囲気。
だが、物腰は柔らかく、どこか影のあるような笑顔に、周囲の女子たちは一瞬でとりこに。
放課後、拓は偶然図書室で本を落とした恋佳を助ける。
拓:「君、綺麗な名前だね。“恋佳”って…文字通り、恋を呼びそう」
恋佳:「え…!ありがとう…。でも、そんなこと初めて言われたかも」
拓は、その後も自然な距離感で恋佳に話しかけるようになる。
恋佳の天然さと無防備な笑顔に惹かれていき、興味を持った様子。
一方、離れたところからその様子を見た大輝は、血の気が引く。
「誰だよ…あの距離感…てか、“恋を呼びそう”って何!?」
それからというもの、拓の“自然な優しさ”に対して、大輝は警戒MAX。
だが、恋佳はそのことに気づかないまま、「拓くんって話しやすくて、いい人だね」と無邪気に笑う。
その夜、恋佳はふと考える。
「私…どうして今日、こんなに大輝くんの顔ばっかり思い出してるんだろう?」
彼女の心の中に、“大輝”の存在が少しずつ特別な位置を占め始めていた――
【生まれた時から君が好きだった】
第7話 恋佳の揺れる気持ち、初めてのドキドキ
拓と話す時間が少しずつ増える中で、恋佳はどこか落ち着かない気持ちを抱えていた。
「拓くんって優しいし、話しやすい…でも、大輝くんといるときの方が、なんか…安心する」
言葉にできないこの“違い”が、彼女の心に小さな違和感を残す。
昼休み、大輝は恋佳に声をかける。
大輝:「最近、よく拓と一緒にいるな」
恋佳:「うん!拓くん、色々教えてくれて…でも大輝くんも、いるとホッとするよ」
その言葉に、大輝はほっとするが、「ホッとする=恋」ではないことも、痛いほど分かっていた。
その日の放課後、恋佳はひとり、校庭のベンチで夕空を眺めながら思う。
「どうして私、大輝くんの顔ばかり思い浮かぶの?」
「拓くんが近づくとドキッとするけど…大輝くんが微笑むと胸がぎゅっとなる」
はじめての“恋”に近い感情に戸惑いながらも、確かに心が動いている。
大輝と話したい気持ちが募り、スマホにメッセージを打とうとして――止める。
恋佳(心の声):「なんで…大輝くんに会いたくて、声を聞きたくて…こんなにソワソワしてるんだろう…?」
一方その頃、大輝は屋上で空を見上げ、恋佳の名前をそっと口にしていた。
「恋佳…俺の気持ち、いつか届くのかな…?」
2人の距離は、近いようで、まだ“届ききっていない”。
【生まれた時から君が好きだった】
第8話 想いが溢れる瞬間、大輝の告白未遂⁉
放課後の教室。恋佳が窓辺でノートをまとめていると、大輝が静かに近づいてくる。
決意を秘めた目は、彼女に向けてまっすぐに。
大輝:「…恋佳、ちょっとだけ、話せる?」
恋佳:「うん、どうしたの?」
人気のない中庭へと足を運ぶふたり。沈む夕陽が2人の影を長く伸ばす。 その空気はどこか、特別で…胸の奥がざわつく。
大輝:「ずっと言いたかったことがあるんだ。俺…お前のこと…」
――その瞬間。
拓:「恋佳!」 拓が慌てて走ってきて、大輝の言葉は中断される。
拓:「急に教室にいなくなって…探してた。今日、話したいことがあって…」
恋佳:「あ、ごめん!大輝くんと少し話してて…」
そのやりとりを見て、大輝の胸に再び焦りと悔しさが押し寄せる。
大輝(心の声):「あと一秒で…“好き”って言えたのに…」
その夜―― 恋佳の中では、大輝の表情と言葉の“途切れた瞬間”が何度も思い返されていた。
「…あのとき、大輝くん…何を言おうとしてたんだろう…?」
胸がぎゅっとなって、なぜか眠れない。
【生まれた時から君が好きだった】
第9話 ほどける誤解と、心の距離
翌朝、恋佳は登校しながら昨日のことを思い返していた。
「大輝くん…あのとき何を言おうとしてたんだろう。気になる…。
今までこんな風に誰かの言葉をずっと考え続けたことなんてなかったのに…」
胸がきゅっとして、少し苦しくて…それが“恋”だとはまだはっきり分からない。
そしてその日の昼休み―― 拓が恋佳を呼び止める。
拓:「…今日、少し話したくて。実は俺、恋愛帝国の制度…ちょっと納得できなくて」
恋佳:「え…?」
拓は、自分の過去や葛藤、そして“自由な恋”への憧れを語る。
「好きな人は、自分で決めたい…でも、今の俺は…気づいたら君ばっかり見てた」
それは穏やかな告白だった。でも、恋佳はただ静かに微笑んで答える。
恋佳:「拓くん、ありがとう。優しい気持ち…嬉しい。でも、私…たぶん、もう答えを知ってる」
その夜。恋佳は、意を決して大輝にメッセージを送る。
「明日、放課後話したいことがあるの。…大輝くんに直接伝えたいから」
翌日、中庭で向かい合うふたり。
恋佳:「昨日、言おうとしてたこと…なんだったの?」
大輝:(一呼吸置いて)「…好きだよ、恋佳。ずっと。小さい頃から、お前だけが俺の全部だった」
恋佳の瞳が、ゆっくりと潤み始める。
恋佳:「…遅いよ、大輝くん。私も、気づいてたのに。…私も好き」
すれ違い、誤解、戸惑い――全部がほどけた瞬間。 ふたりの心が、ついに同じ場所にたどり着いた。
【生まれた時から君が好きだった】
最終話 運命の婚約、そしてこれからのふたり
恋佳と大輝。長いすれ違いを乗り越え、ついに心を通わせたふたりは、今までの距離が嘘のように自然に笑い合う。
恋佳:「ねえ、大輝くん…前みたいに、ただの幼なじみじゃないんだよね」
大輝:「もちろん。これからは…ちゃんと“恋人”として隣にいたい」
そう話す表情は穏やかで、ずっと想い続けた相手にだけ見せる、優しい笑顔。
そして数日後―― 学園の一室で開かれた正式な婚約再確認の儀式。
王国の制度による「運命の相手」が、今度こそ“本当に”心で結ばれた瞬間だった。
恋佳は、大輝に向かって堂々と宣言する。
恋佳:「私、婚約制度で決まったからじゃなくて――大輝くんだから好きになったの」
大輝:「俺も。恋佳じゃなきゃ意味がなかった」
拍手が鳴り響く中、ふたりは静かに手を重ね、歩み始める。
恋愛帝国の“決められた恋”は、ふたりの“選んだ恋”として、輝きを増す。
拓もまた、ふたりを見守りながら微笑む。
「これもきっと、本物の恋だ」
そう言って、彼は静かにその場を去る――次の自分の未来を見つけるために。
卒業後。恋佳と大輝は王国の外交使節として共に世界を巡っていた。
出会う人々に「ふたりのような恋がしたい」と言われるたびに、ふたりは顔を見合わせて笑う。
恋佳:「これからも一緒にいたいよ、大輝くん」
大輝:「ずっと。運命なんて超えるくらい、俺は恋佳を好きだから」
そんなふたりの姿は、“恋愛帝国の伝説”として語り継がれていく―
【生まれた時から君が好きだった 完結】
恋愛帝国――。そこでは、生まれた瞬間から運命の婚約者が決められる世界。
貴族の令嬢として生まれた恋佳(りか)は、穏やかで好奇心旺盛。
けれど“恋”という感情には超鈍感。誰にでも優しく接する彼女は、周囲からも慕われていた。
その婚約者、大輝(たいき)は―― 一見クールで無表情。でも、内心では恋佳を溺愛している。
頭の中は「恋佳可愛い! 恋佳尊い! 恋佳大好き!」の連続なのに、本人には絶対に悟らせないようにしている。
だって、彼女があまりにも天然すぎて…。
登校初日。貴族学園で久しぶりに再会した2人。
恋佳は「久しぶりだね、大輝くん!」と屈託なく笑いかける。
その笑顔に、心臓を撃ち抜かれる大輝。「相変わらず天使か…」と心の中で悶絶。
でも彼女は、同じクラスの男子・玲央(れお)にも笑顔で挨拶。
「玲央くんって優しそう~。仲良くなりたいな!」と声をかける。
その瞬間、大輝の中に黒い炎が燃え上がる――
「いや…待って…なんで他の男子とそんな距離近いの!?」
恋佳は大輝の嫉妬にも気づかず、学園生活を楽しみにしていた。
【生まれた時から君が好きだった】
第2話 空回りする溺愛男子、大輝の試練
学園生活が始まった初日。恋佳はさっそく、クラスメイトたちに笑顔で話しかけていた。
「みんな仲良くしようね!」と無邪気に微笑む彼女は、まるで春の陽だまり。
しかし、大輝はというと――その笑顔を他の男子に向けるたびに心がざわつく。
「俺にだけ、特別って…無理なのか? でも…恋佳はそういう子だもんな…」
その日の昼休み、大輝は意を決して恋佳に声をかける。
「恋佳、これ…お弁当。一緒に食べよ、って思って作ってきたんだ」
恋佳「えっ!? 大輝くんが!? わあ~!すごい、料理できるんだね!」 テンションMAXの恋佳。
しかし、それは“友達の手作り”への喜びレベルであって、 “大輝の想い”にはまったく気づいていない…。
大輝(心の中):「いや違うの、これは“好きな子に喜んでもらいたくて”作ったやつ!!」
恋佳「ねえねえ、この卵焼きすごく甘くて美味しい!玲央くんにも分けていい?」
大輝「……は?」
その瞬間、大輝の世界は少し暗転した。 嫉妬 × 空回り × 鈍感という三重苦に襲われた彼の試練が始まった――。
【生まれた時から君が好きだった】
第3話 嫉妬爆発!? 恋佳と玲央の距離
放課後、恋佳は玲央と図書室で楽しそうに話していた。
「この本、面白そう!玲央くんって物知りだね!」 笑顔いっぱいの恋佳の姿に、大輝は遠くから目撃してしまう。
その瞬間―― 「なんで…なんであいつは“嬉しそうな恋佳”を独占してるんだ…!?」
大輝の中で、嫉妬がついに爆発する!
さらに翌日。恋佳が玲央と勉強の約束をしたことを知った大輝は、思わず廊下で声を荒げてしまう。
大輝:「お前、玲央とばっかり仲良くしてるよな」
恋佳:「えっ…?玲央くんもいい人だし、みんなと仲良くしたいだけで…」
大輝:「俺とは…なんで違うの?」
恋佳:「大輝くんは、大輝くんだよ? 特別っていうか…幼なじみだし、安心するし…!」
その言葉に、大輝は一瞬固まり――
「特別…?安心…それって、恋とは違うんじゃ…?」
恋佳の言葉は、期待と不安を交錯させて彼の心を揺さぶる。
その夜。大輝はベッドの中で考え込む。
「俺は、どうしたら…恋佳に“好き”を伝えられる?」
一方、恋佳も少しだけ、大輝の態度に「何か変だな…」と感じ始めていた――
【生まれた時から君が好きだった】
第4話 恋佳の小さな違和感
翌朝、恋佳は登校中ふと昨日の大輝の表情を思い出していた。
「なんだろう…あのとき、少し寂しそうだった…?」
けれど、恋という感情に鈍感な恋佳は、それが何を意味するのかまでは分からない。
それでも“なぜか”気になってしまう大輝のこと――。
一方、大輝はというと、玲央との距離が縮まる恋佳に内心穏やかではない。
「早く…“俺の気持ち”を届けたい。でも、空回りしたくない…」
もどかしさと焦りを抱えながらも、今日こそはと意を決して話しかける。
大輝:「今日、放課後ちょっと時間ある?渡したいものがあって…」
恋佳:「うん、あるよ! どうしたの?」
放課後―― 大輝は、そっと小さなブローチを手渡す。それは、恋佳の好きな花を模した特注品だった。
大輝:「…この花、お前が好きって言ってたから…その、似合うと思って」
恋佳:「わぁ…すごく可愛い!ありがとう、大輝くん!」
大輝は思わず微笑む。でも、心の中は不安でいっぱい。
大輝(心の声):「ただの『友達からのプレゼント』って思ってるだろ…」
その夜、恋佳はベッドの上でそのブローチを眺めながら思う。
「…大輝くんって、なんか優しすぎるよね。昔とちょっと違う気がする。なんだろう、この気持ち…」
ほんの少しずつ、恋佳の心が“大輝=特別”へと変化を始めていた――
【生まれた時から君が好きだった】
第5話 ふたりだけの放課後、でもこれは恋じゃない?
週末の午後、恋佳と大輝は街のイベントに出かけることに。
「美術展、一緒に行かない?恋佳が好きそうな展示があるみたい」 そう誘う大輝に、
恋佳は「行ってみたい!」と笑顔で即答。
会場では、花をモチーフにしたアートや幻想的なガラス細工が並ぶ。
恋佳は目を輝かせながら、「綺麗〜!大輝くん、センスあるね!」と感激。
でも―― 彼女にとってそれは“友達との素敵なお出かけ”でしかなく、恋の空気にはまったく気づいていない。
一方、大輝は内心ドキドキしながら歩調を合わせ、「今日こそ…何か伝えたい」と思っていた。
途中、カフェでひと休み。 大輝は緊張しながら、恋佳に視線を向ける。
大輝:「…恋佳ってさ、誰かと一緒にいるとき、一番安心できるのって…どんな人?」
恋佳:「えー…誰だろう?うーん…やっぱり大輝くんかな?」
その言葉に、心臓が跳ねる大輝。でもそのすぐ後――
恋佳:「だって、大輝くんって家族みたいで安心感すごいし!」
大輝(心の声):「……いや、家族じゃなくて“彼氏枠”でいてくれ!!」
完全に「親しみ枠」に分類されてしまった大輝は、撃沈寸前。でも、それでも彼の想いは揺るがない。
その帰り道。夕暮れの空の下、恋佳はふと口にする。
恋佳:「今日はすごく楽しかったよ。なんだか…ちょっと特別な感じがした」
その言葉に、大輝の心に少しだけ希望の灯がともる――。
【生まれた時から君が好きだった】
第6話 揺れる気持ちと、現れるライバル
学園に新しく転入してきた男子――その名も 拓(たく)。 長めの前髪に、ちょっとミステリアスな雰囲気。
だが、物腰は柔らかく、どこか影のあるような笑顔に、周囲の女子たちは一瞬でとりこに。
放課後、拓は偶然図書室で本を落とした恋佳を助ける。
拓:「君、綺麗な名前だね。“恋佳”って…文字通り、恋を呼びそう」
恋佳:「え…!ありがとう…。でも、そんなこと初めて言われたかも」
拓は、その後も自然な距離感で恋佳に話しかけるようになる。
恋佳の天然さと無防備な笑顔に惹かれていき、興味を持った様子。
一方、離れたところからその様子を見た大輝は、血の気が引く。
「誰だよ…あの距離感…てか、“恋を呼びそう”って何!?」
それからというもの、拓の“自然な優しさ”に対して、大輝は警戒MAX。
だが、恋佳はそのことに気づかないまま、「拓くんって話しやすくて、いい人だね」と無邪気に笑う。
その夜、恋佳はふと考える。
「私…どうして今日、こんなに大輝くんの顔ばっかり思い出してるんだろう?」
彼女の心の中に、“大輝”の存在が少しずつ特別な位置を占め始めていた――
【生まれた時から君が好きだった】
第7話 恋佳の揺れる気持ち、初めてのドキドキ
拓と話す時間が少しずつ増える中で、恋佳はどこか落ち着かない気持ちを抱えていた。
「拓くんって優しいし、話しやすい…でも、大輝くんといるときの方が、なんか…安心する」
言葉にできないこの“違い”が、彼女の心に小さな違和感を残す。
昼休み、大輝は恋佳に声をかける。
大輝:「最近、よく拓と一緒にいるな」
恋佳:「うん!拓くん、色々教えてくれて…でも大輝くんも、いるとホッとするよ」
その言葉に、大輝はほっとするが、「ホッとする=恋」ではないことも、痛いほど分かっていた。
その日の放課後、恋佳はひとり、校庭のベンチで夕空を眺めながら思う。
「どうして私、大輝くんの顔ばかり思い浮かぶの?」
「拓くんが近づくとドキッとするけど…大輝くんが微笑むと胸がぎゅっとなる」
はじめての“恋”に近い感情に戸惑いながらも、確かに心が動いている。
大輝と話したい気持ちが募り、スマホにメッセージを打とうとして――止める。
恋佳(心の声):「なんで…大輝くんに会いたくて、声を聞きたくて…こんなにソワソワしてるんだろう…?」
一方その頃、大輝は屋上で空を見上げ、恋佳の名前をそっと口にしていた。
「恋佳…俺の気持ち、いつか届くのかな…?」
2人の距離は、近いようで、まだ“届ききっていない”。
【生まれた時から君が好きだった】
第8話 想いが溢れる瞬間、大輝の告白未遂⁉
放課後の教室。恋佳が窓辺でノートをまとめていると、大輝が静かに近づいてくる。
決意を秘めた目は、彼女に向けてまっすぐに。
大輝:「…恋佳、ちょっとだけ、話せる?」
恋佳:「うん、どうしたの?」
人気のない中庭へと足を運ぶふたり。沈む夕陽が2人の影を長く伸ばす。 その空気はどこか、特別で…胸の奥がざわつく。
大輝:「ずっと言いたかったことがあるんだ。俺…お前のこと…」
――その瞬間。
拓:「恋佳!」 拓が慌てて走ってきて、大輝の言葉は中断される。
拓:「急に教室にいなくなって…探してた。今日、話したいことがあって…」
恋佳:「あ、ごめん!大輝くんと少し話してて…」
そのやりとりを見て、大輝の胸に再び焦りと悔しさが押し寄せる。
大輝(心の声):「あと一秒で…“好き”って言えたのに…」
その夜―― 恋佳の中では、大輝の表情と言葉の“途切れた瞬間”が何度も思い返されていた。
「…あのとき、大輝くん…何を言おうとしてたんだろう…?」
胸がぎゅっとなって、なぜか眠れない。
【生まれた時から君が好きだった】
第9話 ほどける誤解と、心の距離
翌朝、恋佳は登校しながら昨日のことを思い返していた。
「大輝くん…あのとき何を言おうとしてたんだろう。気になる…。
今までこんな風に誰かの言葉をずっと考え続けたことなんてなかったのに…」
胸がきゅっとして、少し苦しくて…それが“恋”だとはまだはっきり分からない。
そしてその日の昼休み―― 拓が恋佳を呼び止める。
拓:「…今日、少し話したくて。実は俺、恋愛帝国の制度…ちょっと納得できなくて」
恋佳:「え…?」
拓は、自分の過去や葛藤、そして“自由な恋”への憧れを語る。
「好きな人は、自分で決めたい…でも、今の俺は…気づいたら君ばっかり見てた」
それは穏やかな告白だった。でも、恋佳はただ静かに微笑んで答える。
恋佳:「拓くん、ありがとう。優しい気持ち…嬉しい。でも、私…たぶん、もう答えを知ってる」
その夜。恋佳は、意を決して大輝にメッセージを送る。
「明日、放課後話したいことがあるの。…大輝くんに直接伝えたいから」
翌日、中庭で向かい合うふたり。
恋佳:「昨日、言おうとしてたこと…なんだったの?」
大輝:(一呼吸置いて)「…好きだよ、恋佳。ずっと。小さい頃から、お前だけが俺の全部だった」
恋佳の瞳が、ゆっくりと潤み始める。
恋佳:「…遅いよ、大輝くん。私も、気づいてたのに。…私も好き」
すれ違い、誤解、戸惑い――全部がほどけた瞬間。 ふたりの心が、ついに同じ場所にたどり着いた。
【生まれた時から君が好きだった】
最終話 運命の婚約、そしてこれからのふたり
恋佳と大輝。長いすれ違いを乗り越え、ついに心を通わせたふたりは、今までの距離が嘘のように自然に笑い合う。
恋佳:「ねえ、大輝くん…前みたいに、ただの幼なじみじゃないんだよね」
大輝:「もちろん。これからは…ちゃんと“恋人”として隣にいたい」
そう話す表情は穏やかで、ずっと想い続けた相手にだけ見せる、優しい笑顔。
そして数日後―― 学園の一室で開かれた正式な婚約再確認の儀式。
王国の制度による「運命の相手」が、今度こそ“本当に”心で結ばれた瞬間だった。
恋佳は、大輝に向かって堂々と宣言する。
恋佳:「私、婚約制度で決まったからじゃなくて――大輝くんだから好きになったの」
大輝:「俺も。恋佳じゃなきゃ意味がなかった」
拍手が鳴り響く中、ふたりは静かに手を重ね、歩み始める。
恋愛帝国の“決められた恋”は、ふたりの“選んだ恋”として、輝きを増す。
拓もまた、ふたりを見守りながら微笑む。
「これもきっと、本物の恋だ」
そう言って、彼は静かにその場を去る――次の自分の未来を見つけるために。
卒業後。恋佳と大輝は王国の外交使節として共に世界を巡っていた。
出会う人々に「ふたりのような恋がしたい」と言われるたびに、ふたりは顔を見合わせて笑う。
恋佳:「これからも一緒にいたいよ、大輝くん」
大輝:「ずっと。運命なんて超えるくらい、俺は恋佳を好きだから」
そんなふたりの姿は、“恋愛帝国の伝説”として語り継がれていく―
【生まれた時から君が好きだった 完結】