紫陽花の短編集物語#2

婚約者に溺愛される日はまだ遠い

第1話 イケメン婚約者に夢中すぎて苦しいです

ここは“恋愛帝国”。この国では、生まれた瞬間に運命の婚約者が定められる制度がある。
恋佳の妹、愛佳(わか)も例外ではなく、生まれたときから――一輝(かずき)と婚約していた。
一輝は、学園でも目立つ存在。整った顔立ちに長身、無意識に優しさがこぼれるイケメン。
なの本人は“自分がイケメン”ということにも、“女子たちが騒いでる理由”にも気づいてないという超天然系男子。
そして愛佳はというと――完全に一輝沼。
「一輝くんの寝癖ですら尊い…」「声が低めなの最高なんだけど…」「笑った…あれは破壊力……」
頭の中はイケメン語録だらけ。もはや重症。
だがその一輝は、同級生の女子に普通に「教科書貸して」「ノートありがとう」と話しかけ、愛佳の中では“警報”が鳴り響く!
愛佳(心の声): 「ちょっと待って!? その笑顔は私だけに向けてくれるものじゃなかったの!?」
「ノート受け取る時の“手が触れた事故”は、事故じゃないって信じてるんだけど!?」
でももちろん、一輝は全く気づいていない。
「愛佳? 今日の授業、数学ちょっと難しかったね」なんて普通のトーンで話しかけてくる。
愛佳はその声色にも「優しすぎて惚れ直した…」と感激しつつも、心の中はジェラジェラモード!

そしてその日の帰り道。姉・恋佳に相談する。
愛佳:「ねえ、お姉ちゃん…“溺愛される”ってどうやったらされるの?」
恋佳:「……妹よ、それは私も今やっと辿り着いたばかりなんだよ…」
姉妹の“婚約者との恋奮闘記”は、これから本格的に始まる――!
【婚約者に溺愛される日はまだ遠い】














第2話 鈍感すぎる婚約者に愛が届かない⁉

朝の登校時間。愛佳は今日こそ、一輝に“好きです”をほんのり匂わせようと決意していた。
愛佳(心の声):「大輝くんが恋佳お姉ちゃんを溺愛してるみたいに…私も一輝くんに“好き”って気づかせたい!」
その意気込みを胸に、一輝の隣を歩きながら言ってみた。
愛佳:「一輝くんって…いつも優しいね。隣にいると安心するっていうか…その…特別な感じ…」
一輝:「そっか。愛佳は妹っぽい雰囲気あるし、話しやすいかも」
瞬間、愛佳の表情がフリーズする。
愛佳(心の声): 「……今、妹っぽいって言った? まさかの“お姉ちゃんと勘違いされてる説”⁉ 私は婚約者!   本命枠! 妹枠じゃない!!」
一方、一輝はというと、まったく悪気なく、女子から渡された課題プリントを愛佳に
「これ、参考になるかも」と見せたりしてくる。
愛佳(嫉妬MAX)「…なんで他の女子からもらったプリントを私に回すの!? それ、私が一輝くんに渡したかったのに‼︎」
姉・恋佳が通りかかると、愛佳は相談を持ちかける。
愛佳:「お姉ちゃん…どうやって大輝くんに“好き”って伝えたの?」
恋佳:「え、私は気づいたら大輝が“好き好き好き好き”って態度で押してきてたから…」
愛佳:「そんな甘やかされ経験、私にも来て…!」
だが恋佳は静かに言う。
恋佳:「一輝くんって、自分の気持ちにも他人の気持ちにも天然だからね。でも、きっかけさえあれば…変わるよ」
その言葉に、愛佳は小さく頷く。そして決意する――
「だったら私がその“きっかけ”になる。いつか一輝くんに“好き”って言わせてみせる!」
【婚約者に溺愛される日はまだ遠い】














第3話 ライバル登場!? 愛佳、嫉妬フルスロットル!

学園に現れた転入生――美羽(みう)。
清楚系美人で成績優秀、まるで“完璧令嬢”とも言える佇まい。しかも…一輝に興味津々の様子!
美羽:「一輝さんって、いつも落ち着いていて素敵ですね」
一輝:「え…?あ、ありがとう」(←いつも通り気づいてない一輝)
その光景を遠くから見つめる愛佳。目が笑ってない。
愛佳(心の声):「美羽ちゃん…今“素敵”って言った!?  あの“素敵”は婚約者だけが言うセリフじゃないの!?    今すぐ“婚約者バリア”を発動して一輝の半径50cmに他の女子を近づけない法律作りたい…!」

昼休み、美羽が一輝に「一緒に生徒会見学に行かない?」と誘う。
一輝は「うん、別にいいよ」と無邪気に答える。
それを聞いた愛佳、テーブルのスイーツをスプーンでグサッと刺す。
愛佳(心の声): 「スイーツに罪はない…でも気持ちは、ぐさぐさだよ!!」

その日の放課後。恋佳と大輝カップルを見つけて、愛佳は突撃相談。
愛佳:「ねえ、お姉ちゃん!なんで婚約者って、こんなに無防備なの!?」
恋佳:「分かる…大輝も最初そうだった。でも、行動すれば変わるよ」
大輝:「……その横で“婚約者バリア”とか言ってるの、ちょっとこわい」
愛佳:「大輝くんはいいの! うちの一輝くんを“鈍感→溺愛モード”にする方法、教えてよ!」
次回から、愛佳の“婚約者攻略作戦”が始動!?
【婚約者に溺愛される日はまだ遠い】














第4話 恋の作戦ノート、発動です!

翌朝、愛佳は早く登校して図書室へ。
机に広げたのは、ピンクの表紙に「婚約者攻略計画」と書かれた自作ノート。中を開くと…
•【一輝が好きな食べ物】まだ不明。リサーチ必要。
•【ライバル女子への対応】あくまで礼儀正しく。しかし心は警戒MAX。
•【褒めポイント】髪の毛がふわっとしてる→それとなく言う。
愛佳(心の声): 「このノートを完成させれば…一輝くんの“好き”を引き出せるはず!」

その日、一輝と話すチャンスがやってくる。
愛佳:「ねえ、一輝くんって…甘いもの好き?」
一輝:「うーん…別に苦手じゃないけど。なんで?」
愛佳:「明日…クッキー、焼いてみようかなって思ってて」
それを聞いた一輝はふと微笑む。 一輝:「愛佳が作るの?食べてみたいかも」
その言葉に、愛佳の心は秒で跳ねる!
愛佳(心の声): 「笑った!? 今“食べたい”って言った!? もしかしてこれは…好意の片鱗!?」
だが次の瞬間、隣の女子・美羽がやってくる。
美羽:「一輝さん、明日のレポートって何時まででしたっけ?」
一輝:「えっと…13時までだったような」
愛佳はクッキーの話題が流れてしまったことに、ひそかに“デコピン級ショック”を受ける。
それでも彼女はノートに追加を書く。
•【作戦項目⑦】:美羽ちゃんが現れたら、話題は強めに引き戻す
•【作戦項目⑧】:次は“好きな花”で好みを探る!
作戦は、まだまだ、始まったばかり――
【婚約者に溺愛される日はまだ遠い】











第5話 好きって言わせる作戦、大混乱⁉

朝から愛佳は張り切っていた。
「今日こそ!一輝くんに“好き”って言わせる!」 そう決意した。
そして、作戦ノートの【項目⑧:花言葉から好意を引き出す】を実行する。
登校前に一輝の机の上に、そっと“スズランの花”を飾る愛佳。
花言葉は「純粋」「再び幸せが訪れる」──甘めのメッセージ付き。
愛佳(心の声): 「これで、“なんで花?”って聞かれて“愛のメッセージ”に気づいてくれるはず…!」
しかし―― 一輝:「…誰か、机に花置いた?誰か誕生日?」 無邪気にスルー。
愛佳(内心): 「違う!誕生日じゃないの!花言葉の伏線なの!!」

さらに、昼休みに仕掛けた【項目⑨:手作りクッキー作戦】も展開。
愛佳:「はい、一輝くん!焼いてみたの!…特別に、ね」
一輝:「すごいね、料理できるんだ。みんなで食べようよ」 (→“みんなで”ってなんだ⁉)
クッキーは他の男子にも配られてしまい、愛佳の「特別枠」は消失しかける。

極めつけは、午後の【項目⑩:褒めまくり作戦】。
愛佳:「…一輝くんってさ、髪の毛もふわっとしててかっこいいよね」
一輝:「朝、寝ぐせ残ってる?ヤバい」
愛佳(心の声): 「そうじゃない!ふわってしてるのは構図としての尊さであって、寝ぐせじゃないの!!」
その日、作戦はすべて“天然鈍感フィルター”により回避された。 ベッドでノートを見つめながら愛佳は唸る。
愛佳:「私の作戦、こんなに愛を詰め込んだのに…伝わってない……⁉」

でも、その夜。一輝はスマホのフォルダに、今日のクッキー写真と、スズランの花を保存していた。
一輝(心の声): 「…なんか、最近愛佳が笑ってると嬉しくなるんだよな」 その気持ちは、まだ言葉にならないけれど――確かに、心が動き始めていた。
【婚約者に溺愛される日はまだ遠い】









第6話 気づいてしまった想い、だけど…これは恋?

週末。一輝は、自室でスズランの写真を眺めていた。 それは、数日前に愛佳がそっと机に置いてくれたもの。
「なんで…こんなに、気になるんだろう。花じゃなくて…たぶん、渡してくれた“彼女の笑顔”が…」
初めて、自分の中の“違和感”に気づいた瞬間だった。

一方、愛佳はノートに新たな作戦を追加していた。
•【項目⑪】:笑顔は、ちょっと控えめにして「特別感」を演出
•【項目⑫】:距離感を意図的に保って「気になる存在化」

でも、その朝。一輝から不意に言われる。
一輝:「…なんか今日、いつもより静かだね。元気ない?」
愛佳:「え…!元気、あるけど…なんで急にそんなこと聞くの?」
一輝:「…いや、愛佳が元気ないと…俺、変な感じになるっていうか…」
愛佳、絶句。 それってつまり…「気にしてる」ってこと⁉
でも一輝は、それを“友情”の気遣いと信じ込んでいる様子。

その日の昼休み、美羽が一輝にまた話しかける。
美羽:「最近、愛佳さんと仲がいいですね。まるで恋人みたい」
一輝:「え…恋人って…俺たち、婚約者だけど…そういうのじゃ……」
そう言いかけたとき、一輝は言葉に詰まる。 恋人じゃない。
でも…最近、愛佳が笑うだけで嬉しいし、褒められたら妙に意識する。
一輝(心の声): 「これ…もしかして、俺…“好き”ってことなのか…?」
気づいてしまった感情。 だけどそれを伝えるには、まだ一歩が足りない。

夜。愛佳は日記にこう書いた。
「今日は一輝くんが、ほんの少しこっちを見てくれた気がした。 この気持ちが届くまで…もう少し、頑張ってみよう。」
【婚約者に溺愛される日はまだ遠い】








第7話 揺れるふたり、恋の一歩手前

翌朝。一輝は、いつもより少しだけ早く教室に来ていた。 窓から差す光の中で、ふと昨日の愛佳の笑顔を思い出す。
一輝(心の声): 「なんでだろう…最近、あいつのことばっか、考えてる。
横にいると安心するし…笑うだけで、嬉しい気持ちになる」
その気持ちの正体が“恋”なのかどうか、まだ確信はない。けれど、確実に何かが変わり始めていた。

一方、愛佳はというと――もう限界寸前。
愛佳(心の声): 「私、頑張ってると思うんだよね!? 好きってバレるレベルでアピールしてるよね!?
なのに一輝くんは、まだ気づいてないの!?」

その日。愛佳はクラスメイトにこう相談していた。
クラスメイトA:「わかちゃんって、一輝くんのこと絶対好きだよね。告白したら?」
愛佳:「告白したいけど…それってさ、私から“好き”って言っちゃったら、攻略失敗ってことじゃない!?」
試合に勝って告白に負ける――それだけは避けたい愛佳は、もう一度“自然に伝える”方法を考える。

放課後、ふたりは偶然、校舎裏の中庭で会う。
愛佳:「…今日の空、きれいだね」
一輝:「うん。…愛佳って、よく空を見てるな」
(少し照れたように)「…俺は、お前見てる方が多いかもだけど」
その言葉に、愛佳の思考は一瞬止まる。
愛佳(心の声): 「今……なに!? それ…照れ隠し!? 好きって言いかけた⁉ それってつまり…!?」
でも、一輝はすぐに話題を変えてしまう。
一輝:「あ、そうだ。明日って美術の課題あったよね?」
愛佳(心の声): 「違う違う!戻って!! 今の会話こそが、恋のワンチャンだったのに〜〜!」

その夜。ベッドで日記を書く愛佳。
「今日、ほんの少しだけ…心の距離が近づいた気がする。
でも、“好き”って言わせるには、あと何段階くらい必要なんだろう?」
【婚約者に溺愛される日はまだ遠い】






第8話 伝えたい気持ち、勇気が届く日

放課後、愛佳は意を決して一輝を呼び出す。
「今日こそは…今日こそは、“好き”って伝える!」 そう決め、胸の奥でぐっと気持ちを握りしめる。

中庭。夕日が差し込み、金色の風に髪が揺れる。
愛佳:「一輝くん、少しだけ話したくて…」
一輝:「うん、どうしたの?」
言葉を選びながら、愛佳は震える指先で手を握る。その瞬間、一輝の瞳が驚いたように揺れた。
愛佳:「ずっと…私ね、一輝くんのこと好きなんだ」
静かな時間。風の音だけが響いていた。
一輝:「……え?」
愛佳の目が少し潤む。「やっと言えた…」と笑った瞬間―― 一輝が俯いて、静かに呟く。
一輝:「…俺、なんでこんなにドキドキしてるんだろう」
愛佳:「…え?」
一輝:「愛佳が他の男子と話してるの、最近すっごく気になってて。笑ってると嬉しいし、悲しそうだと落ち着かないし…。でも、それって……俺、“好き”ってこと…なのかな…?」
その言葉に、愛佳は涙ぐみながら頷く。
愛佳:「うん、たぶんそれは、恋ってことだよ」
ふたりの心が、ようやく交差した瞬間。
一輝はゆっくりと微笑む。
一輝:「……じゃあ、改めて言わせて。俺も、愛佳のこと…好きみたい」
そっと手を取り合うふたり。夕焼けの中で、確かな言葉が未来を照らした。
【婚約者に溺愛される日はまだ遠い】












第9話 ふたりの距離、いままでで一番近い日

恋人になってからの初めての朝。 愛佳は、一輝と目が合うたびにドキドキしてしまう。
今まで隣にいることが“当たり前”だったのに、今は“特別”に変わっていた。
愛佳(心の声): 「目が合うだけで…なんか照れちゃう。前は“婚約者”って言葉が形式的だったのに、今は本物の気持ちで繋がってるんだ…」
一輝も、どこか少し柔らかな表情で愛佳を見つめる。
一輝(心の声): 「こんな風に、愛佳のことを“好きだ”って思えるようになったのが不思議で、嬉しくて…。
毎日が少しだけ、特別になった気がする」

その日の放課後、ふたりは姉・恋佳と大輝と偶然カフェで合流。 まるで“姉妹×婚約者”ダブルデート状態⁉
恋佳:「ふたりとも、表情が変わったね。ふふ、これが“恋人効果”ってやつかな」
大輝:「俺は最初から分かってたけどな。一輝は愛佳のこと、ずっと見てたよ」
愛佳は照れつつ、紅茶のカップを持つ手が震える。

そしてその夜。王国から「婚約制度の見直しが検討される」という通達が一部貴族へ届く。
もし変更されるとすれば、運命の婚約者という制度そのものが崩れる可能性がある――
それを知った恋佳が愛佳に話す。
恋佳:「この制度…きっとずっと続くものじゃないかもしれない。でも、それでも――自分で選んだ恋なら、崩れない」
愛佳はその言葉を胸に抱いて、一輝にそっと言う。
愛佳:「一輝くんが私を選んだってこと…私の全部で信じてるから」
一輝:「制度なんて関係ない。“俺は愛佳が好き”って、自分で決めたんだ」
ふたりの手は、前よりずっと強く、確かに結ばれていた。
【婚約者に溺愛される日はまだ遠い】












最終話 本当の婚約、本当の恋

風薫る春。恋愛帝国の学園では、卒業に向けて準備が進んでいた。
愛佳と一輝も、学園最後の季節を並んで歩いていた。
けれど、ふたりの関係は、もう“形式的な婚約者”じゃない。誰よりも深く、確かに結ばれていた。

ある日、校庭でふたりは腰を下ろす。
愛佳:「ねえ、一輝くん」
一輝:「ん?」
愛佳:「今ならちゃんと言える。“制度じゃなくて、一輝くんが好き”って」
一輝:「……俺も。君が“愛佳”だから好きだと思ってる」
言葉にしなくても伝わっていた気持ち。けれど、言葉にするとさらに嬉しい。
愛佳はふと思い出す。あの日、一輝が他の女子と話していて自分がモヤモヤしたこと。
「私、あのとき、なんであんなに嫉妬してたんだろう」って問いかけると、一輝はふと照れくさそうに笑う。
一輝:「気づいたら、俺もそうだったよ。愛佳が他の男子と話してると…心臓バグってた」
ふたりで思わず笑い合う。あのじれったい日々も、全部“大切な時間”だったんだと。

その後、卒業式が近づき、帝国政府から「婚約制度の再選制度」が導入されるという通達が届く。
希望すれば、“婚約の解除”も、“新たな再契約”も可能になるらしい。愛佳は不安を覚える。
あの制度が自分たちをつないだのは確か。でも、それが“選び直せる”となったら――。

ある日の放課後、一輝が静かに彼女を呼び出す。
中庭。柔らかな日差しが差し込む中、一輝は指輪の箱をそっと取り出す。
一輝:「愛佳。制度で繋がったって言われるのは、俺はもう嫌だ」 愛佳:「え…?」
一輝:「だから、俺から選び直したい。婚約じゃなくて、“俺が好きで、君を選んだ”って言える証に」
その指輪は、婚約指輪だった。でも、“制度”ではなく、“想い”で贈られたもの。
一輝:「俺と、改めて婚約してほしい。制度じゃなくて、“俺たちの意思”で」
愛佳(涙ぐみながら): 「……私も選びたい。一輝くんじゃなきゃ、ダメだから。婚約して…ください」
ふたりは、制度を超えて、自分たちの“本当の婚約”を結び直した。

その夜。姉・恋佳がそっと愛佳に言う。
恋佳:「おめでとう、わか。婚約って、制度よりもずっと“気持ちの選択”なんだよね」
愛佳:「うん。やっと分かった気がする。私が好きなのは、“一輝くん自身”。それだけで充分なんだよね」

──翌春。ふたりは卒業し、それぞれの未来へ踏み出す。
恋愛帝国の制度が変わっても、“本物の恋”は変わらない。
ふたりが選んだ絆。それはずっと、変わらず、愛に満ちている。

最後のシーン。カフェで愛佳が小さく呟く。
愛佳:「婚約者に溺愛される日、やっと来たかも」
一輝:「え…今さら?俺、ずっと溺愛してたつもりなんだけど?」
愛佳は笑う。そして――一輝の手をぎゅっと握る。
ふたりの恋は、形式じゃない。選び取った“本物の恋”だった。
【婚約者に溺愛される日はまだ遠い】




番外編 子どもができた日々

春のある朝。カーテンの隙間から差し込む光に包まれながら、愛佳は小さな寝息を聞いていた。
その寝息の主は、ふたりの娘――煌羽(きらは)。
ころんと丸いほっぺ。抱き上げると小さな手がきゅっと握ってくる。 そのぬくもりに、胸がいっぱいになる。
愛佳(心の声)「ねえ、一輝くん。この子はね、“好き”の結晶だよ。
あの日、あなたと繋がった気持ちがこうして形になったんだよ」
朝食の準備中、一輝は抱っこした煌羽をあやしながらご機嫌な表情。
一輝:「愛佳~! この子、さっき俺のネクタイ引っ張って笑ったんだけど!? これ…将来おてんばになる?」
愛佳:「間違いなく、パパ似だと思う」
ふたりのやりとりに、煌羽は「ぱっ!」と。意味不明な言葉で参加し、テーブルが笑顔に包まれる。

午後。お散歩に出た公園で、ベンチに座る愛佳と一輝。
愛佳:「ねえ覚えてる?昔ここで、私ずっと“好き”に気づいてほしくて作戦ノート書いてたの」
一輝:「え、あの伝説のノート!? まだ残ってる!?」愛佳:「あるよ。今は育児ノートに進化したけど」
それを聞いて、一輝はそっと愛佳の肩に頭を預ける。
一輝:「俺、あの頃はほんと鈍感だったな…でも、気づけて本当によかった。
今こうして、君と家族でいられて…世界で一番幸せだよ」
煌羽は芝生の上でぱたぱたと小さな足を動かす。太陽の下で笑う彼女の姿は、ふたりの“恋”が育った証。

夜、絵本を読んで寝かしつける時間。
一輝:「昔々、恋愛帝国に“嫉妬姫”と“鈍感王子”がいてね…」 **煌羽:「……すぴー……」 愛佳:「その話、私が主人公すぎて毎回恥ずかしいから!」
小さな灯りのもとで寄り添うふたり。 そこには、じれったさも誤解もすれ違いも、すべて乗り越えた先にある“やさしい未来”があった。
愛佳(心の声): 「私はきっと、一生あなたに恋してる。この子と一緒にそれをずっと続けていけることが何より幸せ」
【婚約者に溺愛される日はまだ遠い 完結】







第1話 保育園でモテて困る娘と過保護なパパ

朝の保育園。 先生「今日はお友達と仲良くね〜!」
煌羽:「はぁいっ✨」
その笑顔に、瞬時に寄ってくる3人の男児。
男児A:「きらちゃんすき!」
男児B:「あした、きらちゃんとすなばする!」
男児C:「ぼく、きらちゃんのとなりがいい〜〜‼」
先生は思わず笑う。「煌羽ちゃん、今日もモテモテね〜!」
その様子を物陰から双眼鏡で見ていたのは――一輝パパ。
一輝(心の声): 「なんだあの男子たちは…距離が近いぞ……!! この小ささで、すでに恋とか…早すぎる‼」

翌日。お迎え時間。
先生「今日は男の子たちと楽しそうに遊んでましたよ〜」
一輝「……ふむ。親子遠足には父が同行します。男児接触禁止ゾーンを作ります」
愛佳「えっ…えっ⁉」

その夜。煌羽は寝言でこう言った。
煌羽:「ぱぱ、かっこいい〜…」
その一言に、一輝はすべてを許し、寝室で静かに感動していた。
【煌羽の成長編~過保護な一輝パパ~】





第2話 光VS煌羽の“次世代バトル⁉”

保育園イベントの日。 「好きな人にお花を渡しましょう🌼」という園の活動。
ひかりは、そっと男児の一人に花を差し出す。
光:「これ…今日だけ“好き枠”ね」 (←一時的好き枠を設定する3歳の政治力)
しかしその後――同じ男児に、煌羽が笑顔で花を渡してしまう。
煌羽:「はい!おはな〜!たのしかったね〜!」
男児はあっさり「わーい!」と受け取る。光は静かに睨む。
光:「今の、“純粋好き花”でしょ。…後で覚えてなさい」

その日の夕方。ママたちの井戸端会議。
愛佳:「煌羽、すっごくナチュラルに花配ってた…」
恋佳:「うちの光、“3歳の外交スキル”発動してたよ…」
大輝:「俺たちのDNA、強すぎでは…?」
未来の恋愛帝国は、もうすでに“火種”が転がっているのだった――!
【煌羽の成長編~恋佳&大輝の娘・光VS愛佳&一輝の娘・煌羽~】


光編 しあわせって言える未来

帝国の文芸省に配属された光は、凛とした姿勢で執務室に立っていた。
相変わらず優秀で、仕事も完璧。でも、同僚にはこう言われている。
同僚:「恋佳さんの娘ってだけで伝説なのに、何この“姫感”」
そんな彼女も、ふとした瞬間に優しく微笑む。 ある日の帰り道。
恋人となった幼なじみ――蓮斗(れんと)が光を待っていた。
蓮斗:「今日も頑張ったね。お疲れさま、ひかり」
光:「…ん、まあね。あなたがいるとほっとする」
あの頃のツン姫は、いつしか“素直な好き”を言える人に成長していた。
週末はカフェで読書をしながら、彼の肩にちょっとだけ寄りかかる。
光(心の声): 「子どもの頃、“好きって言ったら負け”って思ってたな。
でも今は、好きって言えるこの日々が、なにより強いって思う」
【光の将来編 完結】




煌羽編 恋も仕事も、ぜんぶ幸せ!

煌羽は帝国の保育行政局で働くことに。
子どもと話すのが得意で、あの頃の笑顔はそのまま“癒しのお姉さん”に成長していた。

朝の業務。小さな子に声をかける。
煌羽:「おはよ〜!今日もいっぱいあそぼうねっ!」
同僚:「…その笑顔、こっちが元気出るわ…」
そんな彼女にも、ちょっとだけ“恋”の話がある。
ずっと好きだった研究員の青年――千奏(ちかな)と、ゆっくりと関係が育っていた。

ある日、お弁当を渡しながらさりげなく言う。
煌羽:「…あのね。今日のおかず、一番好きなやつ入ってるの。君のだから、ね?」
千奏(照れながら): 「…ありがとう。俺、きらはちゃんのそういうとこ、好きだよ」
煌羽(心の声): 「わたしも、“好き”って言われるの慣れてないけど…うれしいな。
昔のパパとママみたいに、じれったくて笑っちゃうような恋が、今ちゃんと目の前にあるんだ」
【煌羽の将来編 完結 これにて、恋愛帝国物語、完結!】
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