泣きたくなったら、こっちへおいで
晴れのち、
 

 人の明るく朗らかな笑顔よりも、なす術もなく溢れ出してしまう涙に惹かれる。

 そう明確に自覚したのは、この日のことだった。


「田中ー!」

 ……来た来た。

 朝礼が終わり業務に取り掛かろうとすると、決まって同じ男に声を掛けられる。
 よく通る声の主は営業部の晴永(はるなが)夏生(なつき)。私──田中芙美(ふみ)と同期の若手ながら、営業成績は常にトップクラスの期待の星で。

 私が密かに、苦手な人だ。

「早速だけどこの見積書できれば午前中で!あとこっちの契約書のデータ化もお願い!」

「了解、やっとく」

「ちなみに昨日頼んでたやつはできてたり……?」

「する。さっきメールで送った」

「天才! さっすが俺の田中様!まじ仕事早い! 神! 一生愛してる!」

「それはどうも……」

 名は体を表す、という。
 まさに彼がそうだ。
 すれ違えば思わず振り返ってしまうほど整った顔立ちに、長身で日頃から鍛えていることが伺える健康的なスタイル。営業マンの鑑のような、底なしに明るくノリの良い性格。

 極めつけは、晴れた夏の日差しのようなキラキラとして爽やかな……

 もとい、ギラギラと圧の強い直射日光のような笑顔。

 これがどうにも苦手だ。
 朝からこれを浴びると、低血圧な私は一気に体力と気力を削がれてしまう。

 
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