クールなパティシエが見せる笑顔は私にだけとびきり甘い
それから私は、彼の笑顔を――できれば思いっきり笑った顔をもう一度見たくて週に一度は必ずお店に通っている。
だが、クール。
とにかくクールだ。
ショーウィンドウ越しに覗けば、真剣な表情でケーキを作っている姿ばかり。
ああ、どうしたら笑ってくれるんだろう。
変顔でもする?
いや、それは私の女子力が死ぬ。
面白い話で笑わせる?
そんなネタも度胸もない。

はぁ……。
そんなことを考えながら、私は休日のランニングを始めた。

理由は単純。
太ったのだ、ケーキのせいで。
いや、違う。ケーキは悪くない。
悪いのは私だ。美味しいからって食べ過ぎた私だ。
でも食べたい。なら動くしかない。
カロリーを摂取するなら消費しなければならない。
それが自然の摂理である。
身体を動かすのは嫌いじゃない。
だからまあ、いい。……いや、よくない。
走るのしんどい。
ぜぇ、ぜぇと息を切らしながら公園を走っていると――

「パ、パ、パティシエさん!?」

思わず声が裏返った。
目の前にいた人物が、きょとんとした顔でこちらを見る。

「え?」

うそ。なんでいるの。
心臓に悪い。

「お、おはようございます!」

「おはようございます。奇遇ですね、紅羽さん」

「あ、そうですね……」

反射的に返事をしたあとで気づく。
あれ?私、この人に名前を教えたっけ?
私が首を傾げていると、彼は少し困ったように笑った。

「というより、パティシエさんという呼び方は少し違和感がありますね」

そう言って頬をかく。
普段の白いコックコートではなく、ラフなジャージ姿。
というか――脚、長いな。
スタイル良すぎでは?

「俺は甘梨冬馬(あまり とうま)です。よろしくお願いします」

彼はきちんと頭を下げた。

「あ、どうも!私は紅羽 花蓮(くれは かれん)です」

ぺこりとお辞儀をする。
すると甘梨さんは少しだけ目を細めた。
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