拳にモノを言わせますけどよろしくて?
「――いや、リュティ。リュティと呼んでもいいかい?」
「え?」
「愛称でもいいと言ってくれただろう。それはまだ有効かな」
「フェリスベルトさま……」

 やや照れくさそうに微笑むフェリスベルトのことを、リュティシアはポカンと見つめる。

「私、婚約者のままでいてよろしいの……?」
「あたりまえだろう。いや、私の方こそ息子の救出への参加を止められる不甲斐ない男なのだが……見損なったんじゃないか?」
「いいえ! フェリスベルトさまはキチンと現場の指揮を執りましたわ。人には適材適所というものがありますもの。武にすぐれる者、知にすぐれる者があっていいのです」
「うん。だったらリュティにひらめきと腕力があるのも問題ないだろう?」

 言いくるめようとするフェリスベルト。その言葉にリュティシアは目を見開いた。

(いいの? このままの私でいいの?)

 驚きにちょっとだけ泣きそうなリュティシアの手をフェリスベルトはソファの向かいから乗り出してそうっと握った。

「リュティは唯一無二の人だ。できるならこのまま家族になってほしい。ああ……でも何かをぶん殴る時には、手袋をした方がいいかな」

 そんな冗談を聞きながら、ユーニスは出来る限り気配を消して壁になっていた。同席したことを後悔する。

(私がいなければ……口づけるなりなんなり、できたかもしれないのに!)

 いや、そんな心配は無用だ。
 フェリスベルトはとても紳士な男。あるいは慎重――ビビリともいう。
 リュティシアの心がどこにあるかわからない状態で女性にそんな振る舞いができるようなら、苦労はしないのだった。

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