拳にモノを言わせますけどよろしくて?

10 隠してきた加護

  ✻ ✻ ✻


「加護〈剛力〉――?」
「それと、うまく使えませんけれど〈看破〉ですわ。私が授かった加護は――三種類ありますの」

 宿に戻った一行にはひとまず緘口令がしかれた。そしてリュティシアの部屋にフェリスベルトが訪れている。リュティシアが発動した加護。まずは婚約者であるフェリスベルトに話を聞く権利があると思われた。
 ここにいるのはリュティシアとフェリスベルト、そしてユーニスだけ。多重の加護、しかも戦士じみた〈剛力〉と〈看破〉という秘密はあまり広めるべきではない。

「それでエディの居場所を……ああ、あの燭台の件でも?」
「ええ。私の〈看破〉はあんな直前にしか働きませんので……だから政略にも事件の捜査にもあまり活かせませんわ。半端な力ですわね」

 強がりながらもやや陰を感じさせるリュティシアの口ぶり。そんなことは珍しい。フェリスベルトは首を横に振った。

「見事にエディを助け出したじゃないか。ありがとう」
「フェリスベルトさま……」
「あと、扉を蹴破るあなたの姿は頼もしかった。さすがにトルカートたちも、ぼう然と見ていたな」

 加護を使ってエドゥアルドを救ってくれたリュティシア。フェリスベルトは本気で讃えたのだが、リュティシアはしょんぼりする。

「……こんな乱暴女、フェリスベルトさまにはふさわしくありませんわね」

 つぶやいた声は小さくて、怖れを含んでいる。後ろで聞いていたユーニスがハッとした。
 とにかくエドゥアルドのことだけを考えて加護をさらけだしてしまったリュティシア。だけど今になって不安に押しつぶされているのだ。また婚約破棄か、と。

「リュティシア――」

 フェリスベルトの声は揺れていた。それでリュティシアはうつむいてしまう。真っ直ぐ目を見たまま「国へ帰れ」と言われたくはなかった。それにフェリスベルトだって、にらみつけられながらでは断りにくいだろう。
 ――だが聞こえた言葉はまったく違うものだった。

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