拳にモノを言わせますけどよろしくて?
 誘拐騒動の顛末を語ってしまうと、加護の秘密にもふれることになってしまう。あまり余人に知らしめることではない、という判断だ。

「帰路の船足については驚いていたぞ。帆を畳んでいても走る船だしな。リュティシアは櫂でこぐ小さな舟しか知らなかったらしくて、船べりから川面をのぞきこまれた。誰もこいでいないと言ったのに」
「みずからお確かめになるとは。好奇心旺盛なお方ですなあ」

 他の晶術師たちからもにこやかな反応が返ってくる。活動的で愛らしいリュティシアの味方が増えることをフェリスベルトは望んでいた。

「その結晶動力についてだが、やはり安定調達は厳しいだろうか。あれを常用できれば王都への物資輸送がかなりはかどる」
「さようでございますが……なんといっても晶化術の結晶は、人の苦しみ悲しみによるものですので。人々が安寧のうちに暮らすためにいる我ら晶術師。結晶の生産が増えるようにとは願えませぬなあ」
「もちろん私もそうだ」

 フェリスベルトは苦笑いした。王弟の自分にも民の幸せを守る義務がある。

「となると緊急用だな。まあそれだけでも助かる。このような発展的利用法をもっと研究してみたいところだ。協力してくれ」

 先を見据えるフェリスベルトの指示に晶術師たちは頭を下げた。


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