Please let me hear your voice-君の声を聴かせてー
その時だった。
視界の端に、ゆっくりと歩いてくる人影が見えた。
琉生。
仕事帰りなのだろう、スーツの上着を腕にかけ、駅へ向かって歩いている。
柚歩と優海が並んで座っているのに気づいた瞬間、琉生の足がわずかに止まった。
驚き。
戸惑い。
そして——ほんの少しの痛み。
その一瞬の揺れを、柚歩ははっきりと見た。
琉生はすぐに表情を整え、軽く会釈をして歩き出した。
声はかけない。
近づかない。
ただ、静かに距離を置く。
その優しさが、逆に胸を締めつけた。
「誤解、されてる」
優海は琉生の背中を見送りながら、小さく呟いた。
「……琉生君、柚歩ちゃんのこと大切なんだね」
柚歩は言葉を失う。
優海は続けた。
「大丈夫。私、邪魔するつもりなんてないから」
その言い方が、逆に胸に刺さった。
——違う。
——そんなつもりじゃない。
「婚約者なんじゃ……」
優海はうつむきがちに首を振り、立ち上がった。
「また……話せたら嬉しいな。無理しないでね」
そう言って去っていく背中は、どこか儚く、どこか強かった。
柚歩は胸に手を当てた。
琉生の揺れた表情が、頭から離れない。
優海の寂しげな笑顔も、胸に残っている。
——どうして、こんなにすれ違ってしまうんだろう。
小さな誤解が、静かに三人の心を揺らし始めていた。
視界の端に、ゆっくりと歩いてくる人影が見えた。
琉生。
仕事帰りなのだろう、スーツの上着を腕にかけ、駅へ向かって歩いている。
柚歩と優海が並んで座っているのに気づいた瞬間、琉生の足がわずかに止まった。
驚き。
戸惑い。
そして——ほんの少しの痛み。
その一瞬の揺れを、柚歩ははっきりと見た。
琉生はすぐに表情を整え、軽く会釈をして歩き出した。
声はかけない。
近づかない。
ただ、静かに距離を置く。
その優しさが、逆に胸を締めつけた。
「誤解、されてる」
優海は琉生の背中を見送りながら、小さく呟いた。
「……琉生君、柚歩ちゃんのこと大切なんだね」
柚歩は言葉を失う。
優海は続けた。
「大丈夫。私、邪魔するつもりなんてないから」
その言い方が、逆に胸に刺さった。
——違う。
——そんなつもりじゃない。
「婚約者なんじゃ……」
優海はうつむきがちに首を振り、立ち上がった。
「また……話せたら嬉しいな。無理しないでね」
そう言って去っていく背中は、どこか儚く、どこか強かった。
柚歩は胸に手を当てた。
琉生の揺れた表情が、頭から離れない。
優海の寂しげな笑顔も、胸に残っている。
——どうして、こんなにすれ違ってしまうんだろう。
小さな誤解が、静かに三人の心を揺らし始めていた。