Please let me hear your voice-君の声を聴かせてー
夜の空気は冷たくて、胸の奥の痛みをそのまま映しているようで、優海と別れたあと、柚歩はゆっくりと歩き出した。
足元がふらつき呼吸が浅く、胸の奥がずっと軋んでいた。

——どうして、こんなに苦しいんだろう。

優海の笑顔。
優海の強がり。
優海の「大丈夫」という言葉。
全部が胸に刺さって抜けないまま残っていた。

気づけば、小さな公園の前に立っていた。
街灯の下にベンチがひとつだけ置かれていて、人影はなく、柚歩は吸い込まれるように腰を下ろした。

喉が震え、胸が痛く、涙が静かに落ちていく。

そして——声が零れた。

歌うつもりなんてなかった。
けれど、声が勝手に溢れた。
震えた声、泣きながらの声。
言葉にならない想いが夜の空気に溶けていく。

悲しみが……
痛みが……
優しさが……
全部、声になって流れ出し、涙が頬を伝い、胸が締めつけられる。

でも歌わずにはいられなかった。

——苦しい。
——でも、歌いたい。
——歌わないと、壊れてしまいそう。

夜の公園に、ひとりの少女の声だけが響き、その声は静かに遠くまで届いていた。

***

少し離れた道を、琉生は歩いていた。
胸の奥に今日の優海の言葉が重く残っていた。

ふと、風に乗って“声”が聞こえた。

立ち止まり、耳を澄ます。

震えた声。
泣きながらの声。
それでも真っ直ぐに伸びていく声。

琉生は息を呑んだ。

「……この声……」

胸の奥が熱くなる。
痛いほどに。

姿は見えない。
けれど、その声だけで分かった。

——柚歩だ。

琉生は動けなかった。
ただ、その声に立ち尽くした。
涙の混じった歌声が夜の空気を震わせていた。

胸に手を当てる。

「……どうして……」

言葉にならない。
ただ、その声が胸の奥に深く刺さった。

光のように。
痛みのように。
未来の予兆のように。
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