Please let me hear your voice-君の声を聴かせてー
レコーディングスタジオの空気は外の世界より少しだけ冷たくて、柚歩はブースの前に立ちながら胸の奥が静かに震えるのを感じていた。

——仕事として歌うのは、初めて。

要が横で優しく声をかける。

「緊張して当然だよ。でも、柚歩なら大丈夫」

美桜は資料を抱えたまま控えめに微笑んだ。

「……葉山さん、何か必要なものがあれば言ってください」

その声にはまだ少しだけ気まずさが残っていて、けれど、それが自然だった。

琉生はモニター前に座り、ヘッドホンを首にかけたまま柚歩を見つめていた。

「……準備ができたら、いつでも始めていいよ」

その声は静かで、どこか優しかった。

久遠は後ろで腕を組み、ブースのガラス越しに柚歩を見つめ、優海は資料を確認しながら時折、柚歩の方へ柔らかい視線を向けていた。

柚歩は深呼吸をしてブースの中へ入り、扉が閉まる音が胸の奥に響いた。

ヘッドホンをつけると自分の呼吸がやけに大きく聞こえ、マイクの前に立つと手が少し震えた。

——大丈夫。
——歌える。
——昨日の夜も、歌えた。

目を閉じる。

音が流れる。

そして——声が零れた。

最初の一音は少しだけ震えていた。
けれど、二音目からは自然に流れ出した。

悲しみと……
優しさと……
痛みと……
願いが混ざった声。

昨日の夜、公園で泣きながら歌ったあの声が、今は“仕事”として形になっていく。
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