Please let me hear your voice-君の声を聴かせてー
「もっと高みを目指さないといけないと思う。
 このままじゃ、あの声に追いつけない」

優海が静かに微笑んだ。
その笑みは痛みを隠した優しさだった。

「琉生くんは……もっと高みを目指せる人だよ。自分の気持ちに正直になって。
 琉生君、デザインが好きでしょ。いつも色んなデザイン描いてたんだもん。
 もっと自分の夢追いかけた方がいいよ。行っておいで」

その言葉を聞いた瞬間、柚歩の胸がひどく痛んだ。
琉生の夢は応援したい。
でも——行ってほしくない。

その矛盾が胸の奥で渦を巻き、呼吸が乱れ、足元がふらつく。

久遠が言う。

「フランスだ。Atelier Lumière。
 光と影の造形を学ぶ工房だ。あそこなら兄さんのやりたいことはできるはずだ。
 会社のことは気にしなくていい。俺が兄さんの後を引き継ぐから。父さんには俺から伝えた」

久遠の声は静かで、揺るぎなかった。

「昔、兄さんがデザインの勉強できなくてつらかった時、自分の夢を捨てようとしたけど……
 今はもうあの頃とは違う。兄さんの夢、追いかけていいんだよ」

琉生はゆっくりと頷いた。
その横顔は決意と痛みが混ざった光を帯びていて、柚歩はその光を見つめながら胸の奥が静かに裂けていくのを感じていた。

「……柚歩の声が、俺を変えた。だから行かなきゃいけない」

嬉しくて、誇らしくて、でも苦しくて——涙にならない痛みが胸の奥に広がった。

久遠が静かに告げる。

「出発は、そう遠くない」

世界がまた揺れた。
足元がふっと浮くような感覚がして、柚歩は思わず壁に手をついた。

扉の外からパーティーのざわめきが遠く聞こえ、
光の中で——胸の奥だけが静かに沈んでいく。

――未来は、静かにひとつの方向へ動き始めていた。
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