Please let me hear your voice-君の声を聴かせてー
冬の空気は、息をするたび胸の奥に冷たさを落としていった。
歩を失ってからの時間は、どこにも掴む場所がなくて、ただ暗い底をゆっくり沈んでいくようだった。
部屋の空気も、街の色も、全部が少しだけ灰色に見えた。

優海は毎日のように家に来て、柚歩の生活を静かに支えていた。
買い物も、食事も、洗濯も、何も言わずにやってくれた。
その優しさが痛い日もあった。

「いつも、ごめんね。優海ちゃん」

「いいよ。私が好きにやってるだけだから……」

どうしてここまでしてくれるのか、理由が分からなかった。

ある夜、久遠が訪れた。
玄関の扉が閉まる音が、冬の空気を少しだけ揺らした。

「……話がある」

その声は、いつもより少しだけ硬かった。
優海も静かに立ち上がり、柚歩の隣に座った。

久遠はゆっくり言葉を選ぶようにして口を開いた。

「優海は……お前の従姉だ」

胸の奥がふっと揺れた。
理解が追いつかないまま、視界が少しだけ滲んだ。

「……どうして……言わなかったの……?」

声が震えた。
優海は俯いたまま、指をぎゅっと握りしめていた。

「言えなかった。歩さんのことは昔、父から少し聞いたことがあったけど……
 私自身は歩さんに会ったことがなかった。」

「だから余計に、どう伝えればいいか分からなかった。」

「……ごめんね、柚歩ちゃん……」

その言葉が胸の奥に静かに落ちた。
優海がずっとそばにいてくれた理由が、ようやく形になったのに、心が追いつかなかった。
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