花売り令嬢の身請け~公爵様は一目惚れに抗えない~
「エリーゼ?……シーツが……」
「……あ」

彼の視線の先を辿って、エリーゼはシーツを見た。
レオナールの顔色が変わる。

「……君、まさか……」

レオナールは、エリーゼが慣れていないだろうというのは、すぐにわかっていた。
しがみつく腕の強さも、涙を浮かべる瞳も――
もしかして、それすら男を悦ばせる演技なのかと、勝手に思い込んでいたのだ。

「言ってくれたら、もっと大切にしたのに……」

レオナールが頭を抱えているのを見て、何か粗相をしてしまった?
身請けをなかったことにされてしまうのだろうかと、エリーゼの顔に不安が広がる。

「怒られたっていうのは?」
「あ……昨日が初めてで、誰にも買ってもらえなくて」
「君は運がいいよ。君の前で足を止めたのが僕で。たまたま僕が君を気に入った」

運が良かった。
その通りかもしれない。

再び伸ばされた腕も、触れる手も優しい。
他の人だったらこうはいかなかったのは、初めてを経験するエリーゼでもわかる。

その優しさが、余計に胸を痛ませることになるとも知らずに、再び唇を重ねた。
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