エリート外交官の完璧なる偽装結婚 ……のはずが旦那様は私を溺愛しているみたいです?!
 私は、亮介と一緒に毎日お父さんの説得を続けた。それでも聞き入れないお父さんに亮介はイライラしていた。

「なんだよ、父さんの奴。わけわかんねぇ。手術したら治るって言ってんのに」

 私もそうだ。亮介と同じように、ずっとモヤモヤしている。

 考えても考えても、お父さんが手術を拒否する理由がわからない。天命だなんて、どうして死を受け入れるようなことを言い出すのか。家族を亡くす痛みは、お父さんこそ一番わかっているだろうに。

 でも私までお父さんに怒っては収拾がつかなくなるから、モヤモヤは心の奥に隠した。お互い大人になったけれど、亮介は弟で私は姉。私が冷静でいないと。

「まだ時間はあると思うし、お父さんの話も聞きながら、手術を受けてもらえるように説得しよう」

 穏やかに声をかけながら、亮介の肩を叩いて宥める。

 でも亮介にかける言葉とは裏腹に、私の不安はちっとも小さくならなかった。

 お父さんが手術を拒否している間に病気が進行してしまったら……そんな不安に毎日襲われている。

 不安でどうしようもなくなって、私は仕事を休んでお父さんと話し合うことにした。腹痛がかなりひどいようで、お父さんは仕事を続けられなくなって、ここ最近はずっと家で横になっている。

「お父さん。やっぱり私、手術を受けてほしい」

 和室の布団で横になるお父さんの横に座って訴える。ろくにご飯を食べられないせいで、すっかりこけた頬に胸が痛んだ。

「いや、手術はしないよ」

 その答えに鼻の奥がツンとした。
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