エリート外交官の完璧なる偽装結婚 ……のはずが旦那様は私を溺愛しているみたいです?!
「ああ。もちろん君のお父さんの病状の経過によっては期間が伸びることもあるだろうし、俺の仕事の都合もあるから、期間は前後する可能性があるが」
喉を潤すように黒崎さんは一度コーヒーを飲んだ。私も手元のアイスティーに視線を落とす。溶けて小さくなった氷がひとつ、赤褐色の水の中に落ちていく。
「離婚は俺に非があることにすれば、君のお父さんも納得してくれるんじゃないか?」
「でもそれだと黒崎さんが一方的に悪者になってしまいますよね?」
「逆にその方が俺には都合が良い。俺が悪者になれば、周囲が勝手に俺を結婚不適合者とみなしてくれるから、再婚を勧められないで済むからな」
黒崎さんは私が投げかける懸念に対して、すべて明解な答えを返してくる。私の手元にもうボールはない。おかげで最初はまったくしっくりきていなかった偽装結婚の話も輪郭がはっきりしてきた。
でもまだ、本当にいいのかと躊躇う自分がもの言いたげに見つめている。今日一日だけの嘘が急に地続きになって、気持ちが追いついていない。
「それに今さら結婚をやめたという方が、君のお父さんはショックを受けるんじゃないか?」
そうだった。黒崎さんはもうお父さんの前で結婚式まですると言ってしまっている。逃げ場なんて最初からなかった。
「大丈夫。俺たちは共犯だ。俺も君のお父さんに嘘がばれないよう細心の注意を払うつもりでいる。だからこの話、引き受けてくれないか?」
黒崎さんの目に迷いはない。その強い眼差しに私は体を貫かれ、胸に抱いている戸惑いごと一刀両断された。
「わかりました。これからよろしくお願いします」
喉を潤すように黒崎さんは一度コーヒーを飲んだ。私も手元のアイスティーに視線を落とす。溶けて小さくなった氷がひとつ、赤褐色の水の中に落ちていく。
「離婚は俺に非があることにすれば、君のお父さんも納得してくれるんじゃないか?」
「でもそれだと黒崎さんが一方的に悪者になってしまいますよね?」
「逆にその方が俺には都合が良い。俺が悪者になれば、周囲が勝手に俺を結婚不適合者とみなしてくれるから、再婚を勧められないで済むからな」
黒崎さんは私が投げかける懸念に対して、すべて明解な答えを返してくる。私の手元にもうボールはない。おかげで最初はまったくしっくりきていなかった偽装結婚の話も輪郭がはっきりしてきた。
でもまだ、本当にいいのかと躊躇う自分がもの言いたげに見つめている。今日一日だけの嘘が急に地続きになって、気持ちが追いついていない。
「それに今さら結婚をやめたという方が、君のお父さんはショックを受けるんじゃないか?」
そうだった。黒崎さんはもうお父さんの前で結婚式まですると言ってしまっている。逃げ場なんて最初からなかった。
「大丈夫。俺たちは共犯だ。俺も君のお父さんに嘘がばれないよう細心の注意を払うつもりでいる。だからこの話、引き受けてくれないか?」
黒崎さんの目に迷いはない。その強い眼差しに私は体を貫かれ、胸に抱いている戸惑いごと一刀両断された。
「わかりました。これからよろしくお願いします」