エリート外交官の完璧なる偽装結婚 ……のはずが旦那様は私を溺愛しているみたいです?!
「なぜ? 君は英語も話せるし、教養もある。俺と一緒にレセプションに出席してもらうこともあるだろうから、相手は君が最適だと思っている。現にこの前のイギリスでのパーティーも君がいてくれて大いに助かった」

「はぁ……」

 そういう意味で聞いたのではないけど、どうやら黒崎さんは私の語学力を買ってくれているらしい。

「お互い結婚した方がいい事情があるし、戸籍に傷がつくこともない。俺に彼氏のフリを頼むくらいだから恋人もいないんだろう? 君に不都合はないと思うが」

「でも、やっぱり、騙すような真似は良くない気がして」

「嘘は嘘だとバレなければなにも問題がない。それに君は俺に恋人のフリをさせて、もう父親に嘘をついているだろう? 今さらためらう必要があるか?」

 そうは言っても、恋人のフリと偽装結婚じゃ嘘の重みが違うと思う。恋人ならただ別れたで終わらせられるだろうけど、結婚ならそれなりの理由が必要だ。

 それに偽装結婚を終わらせる時、離婚をしたと告げたらきっとお父さんはショックを受けるはず。ショックで、今よりもさらに体調が悪化するかもしれない。

 氷を飲み込んだように、胃がヒヤリとした。

 お父さんと亮介を騙す罪悪感は、今ですらある。

「だが偽装結婚となると、君が本当に結婚をする機会を逃す可能性もあるか。なら、期間を決めるのはどうだ? 一年くらい結婚生活を続けて、一年経ってから徐々に周囲に不和を打ち明けて離婚を匂わせ、それから半年後に離婚するのはどうだろう?」

「……つまり偽装結婚の期間は一年半ってことですか?」
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