エリート外交官の完璧なる偽装結婚 ……のはずが旦那様は私を溺愛しているみたいです?!
 金を払ってでも、仁奈にパートナーのふりを続けてほしい。

 そう思って帰国後に連絡したところ、驚いたことに彼女の方から「恋人のふりをしてほしい」と提案された。なんという好都合。もちろん乗らないはずがない。

 双方にメリットのある関係ならば、長続きもしやすい。だから早速仁奈と一緒に彼女の父親の見舞いに行った。

 仁奈は幼い頃に母親を病気で亡くし、シングルファザーの父の元で育ったらしい。仁奈は母代わりとして野々村家の家事を担っていた。

 父親は六年前にリストラされ、現在は警備会社の契約社員。弟は国立大の医学部生。家計は区役所に勤める仁奈が主に担っているという。

 そこへ父親の大病が発覚した。

 だが父親は金がないから手術は受けないと言っている。これまで父子家庭で散々苦労をかけ、今も家計を支えるために結婚適齢期になっても恋人すら作らない娘に、これ以上迷惑をかけたくないという親心だった。

 だから仁奈は、偽でもいいから恋人を会わせて父親に安心してもらい、手術を受けるよう説得したいらしい。

 まるで物語のような美談だ。

 でも仁奈らしいとも思った。彼女は空港で見知らぬ迷子の子供を助け、せっかくの旅行を一日潰されても怒ることなく俺に付き合うくらいのお人好しだ。

 そんな仁奈を育てた父親もお人好し。俺の実の父親とは大違いだ。
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