エリート外交官の完璧なる偽装結婚 ……のはずが旦那様は私を溺愛しているみたいです?!
 夜の大使館はライトアップされていた。白い外壁のクラシカルなデザインの建物で、まるでイギリスに戻ったような気分になる。

「今日は駐日イギリス大使の離任のパーティーなんですよね?」

「そう。だから今日のレセプションは出席者がかなり多いんだ。俺から離れないように気をつけて」

 滉太郎さんは、エスコートしてくれている彼の腕に軽く触れているだけだった私の手を掴んで引き寄せた。

 急に密着したから驚いて一瞬だけ息が止まった。

 大広間に着いてからも、滉太郎さんはたびたび私を引き寄せて離れないようにしてくれる。おかげで動揺が波のように絶えず私の心を揺さぶってきて苦しくなった。

 滉太郎さんは顔が広く、たくさんの人に声をかけられていた。

 私は妻として紹介され、そのたびに「結婚おめでとう」と祝福を受けた。やっぱり嘘をつくのは後ろめたい。笑顔が引きつっていないか心配になる。

「滉太郎!」

「東條さん、お疲れ様です」

 また誰かに声をかけられ、私は気を取り直してそちらへ振り返った。

 五十代くらいの顎ひげが似合う紳士だった。隣には桜色の振袖を着た女性が立っている。大学生くらい? 私より年下に見える。
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