エリート外交官の完璧なる偽装結婚 ……のはずが旦那様は私を溺愛しているみたいです?!
「でも俺は仁奈を手放したくない。仁奈がそばにいてくれるならなにもいらないし、なんだってする」

 滉太郎さんがまっすぐ私を見る。

「だから俺に堕ちろよ」

 ゆっくり唇が塞がれる。驚いて、私は目を見開いた。

 滉太郎さんとキスしてる。それに滉太郎さんは、私が好きだと言っていた。

 どういうこと?

 正しいと思っていたものをことごとくなぎ倒されて、頭の中の情報を整理できない。

 息ができなくて苦しいと思った矢先に唇が離れた。酸素を取り込もうと肩を大きく上下させて呼吸をしていると、ベッドに投げ出していた右手をギュッと握られる。

「ま、待って」

「俺は待ちたくない」

 滉太郎さんの顔が目の前にあって、ドキドキしすぎてなにも考えられない。見惚れているうちにまた唇にキスを落とされた。唇を舌で舐められ、びっくりしていると開いた口内に舌が入り込んでくる。

「んぅ、待って、滉太郎さん、話を……」

「別れたいって話なら、聞かないよ」

「ち、ちがっ……」

「仁奈、好きだよ。愛してる。俺は一生離したくない」

 もう一度はっきり言われると、もう疑う余地なんてなかった。

「わ、私も。私も好きですっ!」

 思い切って告げた。

 なのに滉太郎さんは、目を丸くして固まっている。

 あれ。私、なにか間違った?

「滉太郎さん?」

「……待って。今なんて言った?」

「えっ」

 もう一回言うの?

 さっきは勢いで言えたけれど、改まって言うのはなかなか恥ずかしい。でも私がちゃんと気持ちを伝えないと、この絡まった結び目は解けない。
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