毎朝の数秒間〜好きな人にモーニングコールをしています〜
後日、元気になった私は、教室で花田くんにお礼を伝えた。
「花田くん、体育の時はごめんね、本当にありがとう。これ、お礼です」
そう言いながら私は、近所のケーキ屋さんで買った焼菓子のセットを渡す。
「お礼なんて良いのに。ありがとう」
お礼なんて良いって言えるの、良い人だなぁ。
もしかして聖人ですか?
「いやいや、花田くんへのお礼がこんなちょっとしたお菓子じゃ足りないくらいだよ! 私は重いのに保健室まで運んでくれたし」
「桜岡さん心配になるくらい軽かったから気にしないで。体調はもう大丈夫?」
花田くんはそう言いながら微笑む。
気遣いまでできるなんて、どれだけ好きにさせれば気が済むんですか?
「本当に本当にありがとう。ただ深夜までラジオ聴いてて寝不足だっただけだからもう元気だよ!」
「ラジオ聴いてるの意外! 後で聴いてるラジオ教えてよ、俺も聴くからさ」
「そんなのいつでも教えるよ...。それより、何かお礼がしたいから私にできることがあったらなんでも言ってね?」
そう言う私に、花田くんは少し考え込む。
「あっ、無理に考えなくても良いよ! 思い付かないなら、花田くんが何も困ってなくて良いことだと思う」
私がそう言うと、花田くんが顔を上げた。
「そうだ、困ってることあった。俺、朝が弱いんだよね。桜岡さんにモーニングコール頼んでも良い? ほら、バレー部って朝練あるから朝が早くて。俺起きられないからさ」
「え?」
モーニングコール...?
朝から好きな人に合法的に電話できるってこと?
正直、それは最高だけれど一つ問題点がある。
「本当にごめんね、私も朝が弱いんだよね...」
「そうなんだ? お礼って言ったのに?」
花田くんが子犬のようなうるうるな目で私を見る。
よく見ると睫毛は長いし顔が整っていて、心拍数が増してしまう。
好きな人にこんな顔で見られて断れる人がいるのだろうか。
いや、いないだろう。
こんなの、断る選択肢なんて無いよ!
「...毎日できるとは限らないけど、それでも良いなら。あと、私が起きられなくても大丈夫なように自分でもアラームをセットして欲しい」
私はため息混じりにそう伝える。
「それで良いよ。ありがとう、楽しみにしてる」
花田くんは私の頭をぽんっと撫でる。
ただでさえ速くなっている心拍数が余計に速くなった気がした──。