癖毛同盟

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「今日の前髪のうねり、ましになった!」
「わかるー、私の毛先もいいかんじだよ! 昨日のサロンのおかげだよ!」
放課後の図書室の片隅で、今日も女子グループが、ダラダラとお喋りに興じている。
ドラッグストアにトリートメントを見に行こうということになったようだ
彼女たちが出ていったあとは、数人が静かに本を探したり読んだりしている

私は貸出カウンターの奥で、隣に座る蓮先輩に、意を決して声をかけた。

「あの、蓮先輩」
「ん? どうしたの、菜乃ちゃん」

先輩は読んでいた本から顔を上げ、あの綺麗な瞳で私を見つめる。

「先輩、もしかして……昨日部室棟でやってた『癖毛同盟』っていうサロン、先輩が手がけたものですか?」
先輩は一瞬、丸く目を見開いた。
けれどすぐに、観念したようにちょっと照れくさそうに笑って、あっさりと白状した。
「ああ、バレちゃった? ……さすが菜乃ちゃん、よく気づいたね」
「やっぱり……!  でも、どうしてそんなことを?」
私が尋ねると、先輩は少し赤面赤くしてそっぽを向いた。
「……だって、いつも図書室に人が多すぎるんだもん。
あの女の子たちが騒がしくて、全然菜乃ちゃんと二人きりで話せないでしょ」
「え……?」
「だから、友達の美容師のツテを使って、あのサロンを開いてもらったんだ。
女子たちが飛びつきそうな高級ヘアオイルをタダで配れば、みんなそっちに移動すると思って。
……あ、もちろん菜乃ちゃんが来たら作戦の意味がないから、図書委員は立ち入り禁止にしたんだけどさ」

あまりにもびっくりな理由に、私の頭は真っ白になった。
昨日、先輩が丁寧に留めてくれたヘアピンが、夕暮れの光を浴びてきらりと光る。
「菜乃ちゃんのために、ヘアケアのやり方もめちゃくちゃ勉強したんだよ。
……そこまでして、二人きりになりたかったの」
先輩はいたずらっぽく微笑みながら、私の爆発しがちな癖毛を、愛おしそうに優しく撫でた。

「俺、ずっと菜乃ちゃんのことが好きだったんだよ。
この可愛い癖毛も、これからは俺だけに独り占めさせて?」

コンプレックスだったはずの雨の日の髪が、先輩の体温でじんわりと温かくなっていく。
先輩の真っ直ぐで甘すぎる告白に、私の恋はこれ以上ないほど綺麗に実るのだった。
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