癖毛同盟

3

翌日の昼休み。
教室に入ってきた友達のミカが、興奮した様子で私の席に駆け寄ってきた。
「ちょっと菜乃、聞いた!? 昨日、部室棟の空き教室で『癖毛同盟』っていう、一日限定の無料ヘアケアサロンが開かれてたんだって!」
「え? 無料ヘアケアサロン……?」
「そう!
有名な美容室の高級ヘアオイルがタダで貰えて、しかもプロの美容師さんが髪をサラサラにセットしてくれたらしいの。
昨日の雨で癖毛爆発してた女子たち、みんな大大絶賛だったんだから! まさに……」
ミカは拳を握りしめ、ポーズを決めて叫んだ。
「サ☆スーン☆クオリティな仕上がりだったって、みんな超感動してた!」
「サ、サスーン……!?」
そのワードに、私の背中にピキッと電流が走った。
昨日、静まり返った図書室で、蓮先輩がニヤリと笑って言い放ったあの決め台詞が脳裏をよぎる。
「でもさ、そのサロン、すごく変なルールがあったんだよねー」
ミカは不思議そうに首を傾げた。
「なぜか『図書委員は立ち入り禁止』っていう看板が入り口に掲げられてたんだって。
何それ、図書委員だけ髪の悩みを持っちゃいけないの? ひどくない?」
「図書委員は……禁止……?」

ミカの話を聞きながら、私の頭の中で、バラバラだったピースがカチリと音を立てて繋がり始めた。
なぜ、一年で一番雨が酷く、みんなが髪に悩む日にサロンが開かれたのか。
なぜ、図書委員である私だけが、そこへ行くのを禁止されていたのか。
 そして何より――。
(昨日、先輩から甘いヘアオイルの匂いがしてた気がする……!)
もし、あの「サ☆スーン☆クオリティ」という言葉が、ただのセクシーコマンドーのパロディではなく、先輩からの『ヒント』だったとしたら。
「……まさか、ね」
 まさか先輩が、そんな少女漫画みたいなことをするはずがない。そう思いつつも、私の胸の鼓動はどんどん速くなっていくのだった。
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