紫陽花の短編集物語#4

両思いじゃない二人

両思いじゃない二人 第1話 誤解

放課後の教室。清瀬陸と百瀬空が机に向かって話している。
陸 「なあ、空。今日の課題、もう終わった?」
空 「うん。陸は?」
陸 「俺もさっきやっと終わったとこ」
(周囲のクラスメイトがざわざわ見ている)
友達A 「あれ、絶対付き合ってるよね」
友達B 「二人ともお似合いすぎ!」
陸 「え、え? 付き合ってる…?」
空 「はあ!? 違うから! ただの友達!」
陸 「本当に勘違いだって!」
友達C 「でも二人、いつも一緒にいるじゃん!」
陸 「だからって付き合ってるわけじゃ…」
空 「友情って知ってる? 恋愛感情じゃなくても深い関係ってあるの!」
陸 「うん、俺たちは大親友なんだってば」
(クラスメイトたちがさらに騒ぐ)
友達A 「友情っていうか…でも顔が近いし」
空 「いや、ただ教科書見せただけ!」
陸 「目が合っただけで付き合ってるとか言わないで!」
(陸と空、お互いに苦笑い)
陸 「もう、僕たちは両思いじゃないんだから」
空 「うん、絶対両思いじゃない!」
(微妙にクラスメイトが納得できず、陸と空は肩を並べて教室を出る)
陸 「でもさ、こうやって誤解されるのも悪くないかもな」
空 「うん。なんだか友情が強化された気がする」

両思いじゃない二人 第2話 友情宣言

放課後、校舎裏のベンチ。陸と空が体育館シューズを片付けている。
陸 「今日も“絶対両思い”って言われたな…」
空 「ね。あれ言われるたびに、なんか背中ムズムズする」
陸 「俺たち、そんなにそう見えるのかな」
空 「いやいや、見えないって。だってさ、陸って…」
陸 「…って?」
空 「めちゃくちゃ“友達顔”してるもん」
陸 「友達顔ってなに!? それほめてる!?」
空 「ほめてるよ。落ち着くってこと」
(空はベンチに腰かけ、少し遠くを見る)
空 「昔からさ、陸といるときって一番素でいられるんだよね」
陸 「あー、それは俺も同じかも」
(沈黙。夕日が二人を照らす)
陸 「でもさ、空」
空 「ん?」
陸 「周りがどう思おうが、俺たちは俺たちでいいよな」
空 「うん。恋愛じゃないけど、ちゃんと“特別”だよね」
陸 「そう。友情の特別」
空 「じゃあ宣言しとこ」
(空、陸の方を向き直る)
空 「清瀬陸は、私の大親友です!」
陸 「百瀬空は、俺の最高の相棒です!」
(2人、拳を軽く合わせる)
空 「これで誤解されても、もう気にしない」
陸 「うん。だって、俺たちが一番わかってるから」
(その瞬間、背後からクラスメイトがひょっこり顔を出す)
友達A 「……いやいや、今の絶対告白シーンでしょ!!」
空 「えぇぇぇぇぇぇ!? 違う!!!」
陸 「なんでそうなるんだよ!!!」
全力で否定する二人。友情は強いが、誤解も強い。













両思いじゃない二人 第3話 恋の代理戦争

昼休み。食堂。陸と空が向かい合って座り、弁当を食べている。
陸 「今日の唐揚げ、めっちゃ当たりなんだけど」
空 「えーずるい。私のはちょっと冷めてる…」
(空が陸の唐揚げをひょいと取る)
陸 「おい! 勝手に!」
空 「大親友特権!」
(そこへ、クラスメイトの女子二人がやってくる)
友達女子A 「ねえ陸! ちょっと手伝ってほしいことあるんだけど!」
陸 「ん? なに?」
友達女子B 「私たち、空と陸をくっつけたいの!」
空 「はああ!? 聞こえてるんだけど!!!」
陸 「なんでそうなるの!?」
友達女子A 「だって空って、陸のことになると表情柔らかいし」
友達女子B 「陸も空にだけツッコミ優しいし!」
空 「いや、それは友達だからでしょ!!!」
陸 「俺たち、ほんとに恋とかないから!」
(すると今度は男子2人組が来る)
友達男子A 「陸、お前空好きなのかと思ってた」
陸 「だから違うって!」
友達男子B 「じゃあ空は陸のどこが好きなんだ?」
空 「好きじゃないって言ってるじゃん!!!」
(周囲の生徒がざわざわ囲み始める)
友達女子A 「じゃあ質問! 陸のどこが“友達として”好き?」
空 「…友達として!? んー…」
(空、陸をじっと見る)
空 「真面目すぎるところ。あと、誰にでも優しいのに適度に雑なところ」
陸 「雑って言うな!」
友達男子B 「ほら!! 絶対好きじゃん!!!」
陸 「いやいや! 次、俺も言うから!」
(陸、空を見る)
陸 「空はさ、気遣いできるし、でも変なところで子どもっぽいし、話してて楽なんだよ」
空 「子どもっぽいは余計!!!」
友達女子A 「ね? もう両思いでいいよね?」
陸&空 「よくない!!!」
(生徒たちの“代理恋愛推奨運動”が盛り上がる)
陸 「おい空、これ…止める方法ある?」
空 「ない。というか火がついたら最後…」
(2人はため息をそろえてつく)
陸 「でもさ」
空 「ん?」
陸 「たとえ誤解されまくってもさ、俺たちの関係は変わらないよな」
空 「もちろん。恋じゃないけど、大事なのは本当だから」
陸 「よし、じゃあ堂々と友情貫くしかないな」
空 「うん、全力で!」
(その後ろでクラスメイトたちが「いや絶対付き合うやつ…」とざわついている)
陸 「……聞こえてるぞー!!!」
空 「ほんとやめてーーー!!!」
誤解は加速するばかりだが、2人の友情はさらに強固に。






















両思いじゃない二人 第4話 デート疑惑

土曜の午後、ショッピングモール。陸と空が並んで歩いている)
空 「あ、陸。あの店行っていい? 文具セールしてるっぽい」
陸 「いいよ。ついでに俺、スニーカー見たいし」
(2人はいつもの感じで店内へ。仲良く並んで商品を見る)
空 「このペンかわいい〜。色合い最高」
陸 「またペン買うの? 何本目?」
空 「ふふ、気にしない気にしない」
(そんなとき、遠くから目ざとい視線)
友達女子A 「……あれ? もしかして陸と空じゃない?」
友達女子B 「うそ、ほんとだ! ちょっと見て、あの距離感! 完全にデートでしょ!!」
(女子2人、木陰みたいな棚の陰から全力で観察)
空 「陸、これ似合うと思う」
陸 「いや、その蛍光色は攻めすぎだろ」
友達女子A 「ほら〜! お互いの服を選び合うって! これはもう脈ありのやつ!!」
友達女子B 「付き合ってるの隠してるんじゃない?」
(空と陸はそんな視線に気づかず)
陸 「俺、ちょっと靴見てくる。空は?」
空 「文具見終わったら行く!」
(2人が自然に別れる)
友達女子A 「別行動!? え、え…これもう夫婦の買い物…?」
友達女子B 「“効率重視のカップル”だ……!」
(空、後ろ姿でため息)
空 「ペン1本選ぶだけなのに、なんか肩こった…」
(そこへ陸が戻る)
陸 「おい空、これ見ろよ! セールの靴めっちゃ安い」
空 「ほんとだ! めっちゃお得じゃん!」
(2人のテンションが上がる)
友達女子A 「……はしゃぎ方もカップル」
友達女子B 「どう見てもカップル」
(ついに女子2人が声をかけに来る)
友達女子A 「ねえねえ…今日、デートなんでしょ?」
陸 「は?」
空 「ちがっ……!! またそれ!!?」
友達女子B 「だってモールで二人きりなんて!」
空 「普通に買い物です! ただの友達!」
陸 「誤解しすぎ!! 人の自由!」
友達女子A 「でもさ…ほんとに付き合ってないの?」
空 「ほんとに!」
陸 「ぜんっぜん!」
(女子たちはまだ信じていない顔で帰っていく)
空 「……なんか疲れた」
陸 「おつかれ。もうドリンクでも飲む?」
空 「飲む。糖分くれ」
(2人、フードコートでジュースを買って座る)
陸 「でもさ」
空 「ん?」
陸 「こうやって一緒に出かけるの、なんか落ち着くよな」
空 「わかる。恋じゃないけど、安心できるっていうか」
陸 「……またこれ聞かれたら、どう説明したらいいんだろうな」
空 「言葉じゃなくて、行動でだよ。見てればわかるでしょ、私たちが“恋じゃない”って」
陸 「……まあ、たしかに」
(遠くの席でさっきの女子2人がこっそりメモを取ってる)
友達女子A 「……いや、見てもわからん」
友達女子B 「逆に確信した」
陸&空 「聞こえてるからー!!!」
誤解はますます深まり、2人は頭を抱える。














両思いじゃない二人 第5話 距離感

放課後。人気のない図書室。陸は宿題をしている。空が静かに近寄る。
空 「……陸」
陸 「ん? どうした?」
空 「今日さ、ちょっとさ……変なこと言ってもいい?」
陸 「なにそれ。いつも変じゃん」
空 「言い方!!」
空は机に資料を置き、少し深呼吸。
空 「あのね……今日、別のクラスの子に言われたんだ。“陸と仲良すぎて恋人作れなさそう”って」
陸 「あー……ありそうなやつ」
空 「でしょ? なんか慣れてると思ったのに、意外と刺さったんだよね」
(陸は手を止めて空を見る)
陸 「……空はさ。恋人とか、ほしいの?」
空 「ほしくないわけじゃないよ。でも……」
(空、机に指先で円を描きながら)
空 「陸といる時間が楽しすぎて、いざ誰かに誘われても“うーん”ってなる」
陸 「……それは、確かに」
(陸も視線を落とす)
陸 「俺もさ、空と話してる時間が居心地よすぎて、ほかの人と話すと逆に気疲れしちゃう」
空 「それそれ。そういう感じ」
(沈黙。少し気まずさが漂う)
空 「……でもさ、こういうの、相手からしたら“距離感近すぎ”って思われるよね」
陸 「まあ……たぶんね」
空 「陸の未来の彼女さんとか、嫌がりそう」
陸 「空の彼氏さんも、たぶん俺に嫉妬する。絶対する」
空 「だよね〜〜〜〜」
(ふたり、同時にため息)
陸 「……でも、だからってさ。俺たちの距離、無理やり離す必要ある?」
空 「……ない、と思う」
陸 「だよな」
(空、ぽつりと言う)
空 「私ね、友情にだって“特別”ってあっていいと思うんだ」
陸 「……うん。俺もそう思う」
(そのとき、図書室の入口から声が聞こえる)
友達男子A 「……おい。あれ絶対告白シーンだろ」
友達男子B 「距離感近いって話してる時点で好きじゃん……」
空 「……もう無理。耳が腐る」
陸 「図書室で盗み聞きすんな!!!」
(恋愛じゃない距離感の難しさに直面しながらも、深い友情を選ぶ二人)

















両思いじゃない二人 最終話 友情は最強

夕方の校庭。帰り道、陸と空が並んで歩いている)
空 「ねえ陸。結局さ、今日も“絶対付き合うでしょ”って言われたよ」
陸 「俺も別で言われた。“両思い確定おめでとう”って」
空 「おめでたくないわ!!!」
陸 「いやほんとそれ」
(ふたり、同じタイミングで笑う)
空 「でもさ……最近ちょっとだけ思うことあるんだ」
陸 「なに?」
空 「“男女の友情って成立しない”って言う人、なんでそんなこと言うんだろうって」
陸 「あー……」
空 「なんかさ、『恋愛にならなかったら負け』みたいな考え方してる人、結構いるじゃん?」
陸 「うん。いる」
空 「でも私、陸との関係って、別に恋愛じゃなくても十分すぎるくらい大事なんだよね」
(陸、少し驚いたように空を見る)
陸 「……それ、俺も」
空 「え?」
陸 「恋愛じゃなくてもさ。空といると、強くなれるっていうか。ちゃんと本音で話せるっていうか」
空 「うん」
陸 「誰よりも頼れるし、わかってもらえるし……“友達”って言い切れるの、俺は誇りだよ」
空 「……」
(空、胸の前で手をぎゅっと握る)
空 「……なんか……いいこと言うじゃん」
陸 「だろ?」
空 「でもさ、これでまた周りに聞かれて、誤解されるんだろうなぁ……」
陸 「もういいじゃん、誤解されても」
空 「え?」
陸 「俺たちが“恋じゃない”ってわかってれば、それで十分でしょ」
空 「……そうだね」
(風が吹く。桜の花びらが舞う)
空 「ねえ陸。私たちってさ……」
陸 「ん?」
空 「恋じゃないけど、一生もんの友情だよね」
陸 「もちろん」
(2人、拳を軽く合わせる)
陸 「清瀬陸と百瀬空は――」
空 「――“恋じゃない最強コンビ”です」
(その瞬間、茂みの陰からまた聞き耳)
友達A 「……あれはもう、もう……なんなんだ……?」
友達B 「友情なの?恋なの?どっちなの?」
空 「どっちでもない! 聞いてるなら出てこい!!!」
陸 「お前ら、毎回タイミング良すぎ!!!」
(周りはまだ誤解し続けるけれど、
 二人の友情は揺るがない)
(夕焼けの中、笑いながら歩き去る——)
―― 友情最強。恋じゃなくたって、ふたりは最強のパートナー。
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