この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました
 軽く引かれるような形で、帆奈美も一歩踏みだした。

 「行こう」
 「はい……」

 ごく自然に言われてしまって、振りほどくタイミングも見つからない。

 (これ……ずっと、このまま?)

 繋いだ手の温度が伝わってきて、やけに意識してしまう。

 入口をくぐると、外の光がすっと遮られて、館内は落ち着いた青に包まれていた。天井や壁に映り込んだ水の揺らぎが、空間を静かに満たしている。
 家族連れやカップルなど、土曜日だけあって人の出は多い。その波に乗るようにして奥へ足を進めた。
 最初に目に入ったのは、小さな熱帯魚たちが泳ぐ水槽だ。色とりどりの魚が光を反射して、きらきらと水の中を舞っている。
 思わず足を止めると、それに合わせて宏臣も自然と歩みを緩めた。

 繋いだ手は、そのまま。離れる気配はない。引っ張るわけでもなく置いていくわけでもなく、帆奈美の歩調に合わせて、さりげなく隣にいる。
 些細なことだけれど、重要なポイントだ。

 次の水槽では、群れをなして泳ぐ魚たちが、まるでひとつの生き物のように動いていた。
 流れるように形を変えていくその様子に、思わず見入る。
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