この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました
 宏臣の言葉を跳ねのけるほど強く返された。

 「もちろん、そうではありませんが。その身代わりの女性を僕が気に入ったので、結果的にはよかったと思います。母さんも、僕の結婚を望んでいましたよね? お望み通り、僕は結婚しますので」
 「庶民との結婚が許されると思ってるの? うちとは格が違いすぎるのよ!」

 凪子の声が、ぴんと張りつめた空気をさらに鋭くする。
 だが宏臣は、表情ひとつ変えなかった。

 「格、ですか」

 穏やかに繰り返す声音は、あくまでやわらかい。

 「ええ。東城家がどれだけの家柄か、あなたが一番わかっているはずでしょう」
 「承知しています。ですが、その〝格〟というものが、僕の人生においてどこまで優先されるべきかは、またべつの話かと」
 「なにを言っているの……」

 呆れと苛立ちが混じった声に、宏臣は淡く微笑む。

 「母さんが望んでいるのは、東城家にふさわしい結婚でしょう。でしたらご安心ください。対外的に問題が起きるようなことはいたしません」

 ――そういうことを言っているんじゃないのよ。
 口に出さずとも伝わってくる気に、内心でだけ肩をすくめる。

 「ですが、誰と結婚するかは僕が決めます」
< 119 / 172 >

この作品をシェア

pagetop