今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜
「不愛想なやつでしょう」
社長が、苦笑混じりに言った。
「いいえ……」
わたしは、正直に首を振る。
「怖いですけど、でも……真剣さが、伝わってきました」
「真剣すぎて、不器用なんですよ。いつも」
社長は、
デスクの端に置かれた一枚の写真立てに視線をやった。
そこには、まだ幼い頃の快浬さんと、
その隣でキッチンに立つ女性の姿が写っていた。
柔らかな笑顔の、ショートカットの女性。
「彼には、いろいろと背負わせてしまっている。だからこそ、あなたのような人に出会わせたかった」
わたしは、その写真を一瞬だけ見つめた。
そこにあるのは、
どこにでもある『台所の風景』の一枚。
けれど、写真の中のキッチンの端には、
見覚えのあるステンレスの輝きがあった。
「それは……」
「暁の、二代目のフラッグシップモデルですよ。二十年前のものですがね。息子は、ずっとあのキッチンを見て育ちました」
社長は、目を細める。
「春日さん。暁は、もう一度、〝誰かの記憶に残るキッチン〟を作らなければいけない。そのためにも、あなたの力をお借りしたい」
胸の奥で、何かが静かに鳴った。
前の会社では、
最後まで守りきれなかった〝誰かとの約束〟。
あのときの自分に、
もう一度チャンスが回ってきたような感覚。
「……はい」
わたしは、言葉に力を込めてうなずいた。
「私も、誰かの〝一日の終わりの景色〟に、そっと混ざれるようなキッチンを作りたいです」
その日。
春日小春と久遠快浬は、
まだ互いのことをほとんど知らないまま、
同じゴールの方角を、無意識に見つめ始めていた。
暁キッチンの長い一日の、
その一ページ目が、静かにめくられた瞬間だった。