今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜
「……分かりました。ご迷惑をおかけしないよう、まずは現場を見させてください」
わたしは、一度深く頭を下げた。
「学びながら、いっしょに、いいものを作れたらと思っています」
言葉を選びながら顔を上げると、
快浬さんの黒い瞳が、
真っ直ぐこちらをとらえていた。
静かな沈黙が、数秒続く。
その中で、わたしは奇妙な感覚に襲われていた。
この人は、怖い。
けれど同時に、どこかで『同じ匂い』がする。
責任感の重さからくる、表情の硬さ。
理想を語ることに慎重すぎるところ。
それでいて、心のどこかでは、
まだ何かを信じていそうな、かすかな光。
「……分かりました」
快浬さんは、ようやく口を開いた。
「明日から一週間、工場とショールームを案内します。僕のスケジュールに合わせてもらう形になりますが、それで構いませんか」
「はい、もちろんです」
「そのあとで、最初のコンセプト案を、見せていただきます」
〝まず見せてください〟ではなく、
〝見せていただきます〟。
その言い方には、
対等でいようとする意志が、
ほんの少しだけ感じられた。
「では、今日はこれで失礼します」
快浬さんは父に軽く会釈すると、
踵を返して社長室を出ていった。
ドアが閉まるまでの間、
わたしはその背中を目で追っていた。
背筋の伸びた、迷いのない歩き方。
でも、よく見ると、肩の辺りに、
重たい荷物をずっと背負ってきた人間特有の硬さがある。
扉が閉まるり、社長室に、
再び静けさが戻った。