今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜
午後。
開発本部と商品企画部のメンバーが集められた。
「まず、無断で長期間席を外したことについて、お詫びします」
快浬さんは、冒頭で深く頭を下げた。
「本来であれば、きちんとした手続きと共に行うべきことでした。結果として、皆さんに余計な不安と負担をかけてしまったことは、言い訳のしようの余地がありません」
ざわめきが、少しだけ収まる。
「ただ――」
快浬さんは顔を上げ、
ホワイトボードに、一枚の写真を貼った。
テレビで何度も見たことのある、
日本代表サッカー選手と、
その妻のツーショット写真。
そして、その隣に、
暁のロゴが配置されたパネルの写真。
「先ほど、正式な契約書にサインをいただきました」
会議室が、一瞬で静まり返る。
「暁の新シリーズ〝Calma〟のCMに、このお二人が出演してくださいます」
意味を理解するまで、数秒のラグがあった。
「……え?」
「マジで?」
「あの日本代表の顔である水戸選手と、飾らないで有名な奥様が、うちのキッチンのCMに出るってこと?」
ざわざわと、
大きな波のようなざわめきが広がる。
「これが、〝プランB〟です」
快浬さんは、静かにそう言った。
「以前から何度もアプローチをしては断られを繰り返していましたが、今回、直接先方とお会いし、〝Calma〟のコンセプトと、〝無理をしないで、一人じゃない〟というキーワードを、僕自身の言葉で伝えてきました」
ホワイトボードには、
簡単なタイムラインと、
交渉の経緯が書き込まれていく。
「もちろん、CM一本でシェア一位を確約できるわけではありません。それでも、〝家事分担〟や〝共働きのリアル〟を語ってきたお二人が、暁のキッチンを選んでくれたことには、大きな意味があると考えています」
誰かが、ぽつりとつぶやく。
「……逃げてたんじゃなくて、〝ぶつかりに行ってた〟ってことか」
快浬さんは、
その言葉に一度だけ目を向け、
ほんの少しだけ笑った。