今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜
食事を終えたころ。
キッチンのライトが、ふわりと柔らかく点いた。
『無理しないで』
小さなチャイム音と一緒に。
「はい、無理しない」
わたしが、ふっと笑う。
「洗濯物は?」
「僕がやります」
「いいんですか」
「もちろん」
快浬さんは、まるでCMのセリフみたいに言う。
「〝家族の時間を守る〟を、僕たち自身が試さなくてどうするんですか」
そう言って、
ふたりはキッチンから一歩下がる。
リビングとの境目。
壁の『ここからスイッチ』に、
わたしが指を伸ばした。
「じゃあ、ここからは」
カチ、と。
小さな音。
「ふたりだけの時間で」
ソファに並んで座る。
テレビでは、
かつてのサッカー選手夫妻のCMが、
再放送されていた。
『〝今日はここまでライト〟があるから、明日の自分にバトンを渡せる――』
画面の向こうで、本物の夫婦が笑い合う。
その後ろに、一瞬だけ映る、開発者ふたりの姿。
「あのとき、〝夫婦感ある〟って言われましたね」
「言われましたね」
「今なら、ちょっと胸を張って見られます」
「胸を張って?」
「だって、今の私たち、本当に〝夫婦〟なので」
わたしが、そっと快浬さんの肩にもたれる。
キッチンのライトは、
すでに『ここまで』を告げて消えている。
けれど、ふたりの『ここから』は、
まだまだ続いていく。
仕事でも。
暮らしでも。
何でもない、明日の朝ごはんの話でも。
この先、きっとたくさんの壁も、
すれ違いもあるだろう。
それでも、
〝今日はここまで〟と、お互いを許し合える限り。
ふたりの物語は、
何度でも『ここから』を選べる。
だから、これは――
『終わり』ではなく、『始まり』。
それは、二人で作る未来でもある。
〝今日はここまで〟。
〝ここから一緒に〟。
その言葉を合図にして、
ふたりはこれからも、同じ未来を見ていく。
――完。