今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜

Calmaプロジェクトが本格的に動き始めたころ。

僕は、会議の場で彼女にボールを投げた。



「春日さんなら、どうしますか」



企画会議の真ん中でそう尋ねると、
彼女は一瞬だけ肩をすくめてから、
きちんと意見を言った。



「〝全部できるキッチン〟じゃなくて、〝今日はここまででいいやって思えるキッチン〟がいいです」



あのときの言葉は、たぶん一生忘れない。

〝ここまででいい〟と言える自信。

僕にいちばん欠けていたものだった。

彼女を暁に連れてきたのは、
会社のためだけではなかったのかもしれない。

自分がどうしても手放せなかった『全部やらなきゃ』という呪いを、
誰かに言語化してもらいたかったのだと、今になって思う。

その『誰か』を、
僕は無意識に春日小春さんに選んでいた。

好きになるまでの過程を、
ひとことで説明するのは難しい。

ヘッドハンティングしたときには、
まだ『優秀な人材』としか見ていなかった。

暁に来た当初は、
『危ういくらい真っ直ぐな若手』として見ていた。

でも、〝手伝って〟と言えない僕に、
何度もさりげなく『無理をしないで、一人じゃない』と行動で示してくれるようになってから。

それは、
ただの評価や信頼ではなくなっていった。


――この人がいないと、
僕はまたどこかで壊れるかもしれない。


そう思った瞬間、
それはもう『好き』の一歩手前まで来ていたのだと思う。
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