今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜
ドアが開く。
広い社長室は、
意外なほど質素だった。
壁際には歴代のモデル写真と、
受賞トロフィーの棚。
だが、
中央には無駄な装飾のない大きなデスクと、
革張りのソファだけ。
窓辺に立って外を眺めていた男が振り返る。
「よく来てくれました、春日さん」
暁キッチン三代目社長、久遠《くおん》泰臣《やすおみ》だった。
六十代半ば。
背筋がきちんと伸びている。
ネクタイは控えめな深いネイビー。
目尻に刻まれた皺は、厳しさというより、
よく笑ってきた人間のものに見えた。
「春日小春です。本日付で商品開発部に——」
言い終える前に、
社長は「とりあえず座って」と手でソファを示した。
「緊張させてしまいましたね。堅苦しい挨拶は後にしましょう」
対面のソファに腰を下ろした瞬間、
厚いクッションに身体の力が抜けた。