今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜



「では、〝一日の終わりの台所〟についても、教えていただけますか」



快浬さんが、さりげなく本題に近づけていく。



「シンクの中が空っぽになった時、〝ああ、終わった〟って思いますね」



「食洗機を回し終わって、ピーピー鳴ったあと、ドア開けて〝ふーっ〟って」



「逆に、終わらないまま寝ちゃった日の翌朝は?」



「地獄ですね。シンク見た瞬間、〝昨日の自分、なんでここでやめたの〟って怒りがわきます」



笑いながらも、言葉は本音だ。

美桜さんも、真剣な顔でうなずく。



「〝今日の自分を許せるライン〟って、人によって違うと思うんです。たとえば、グラス一個だけ残ってても平気な人もいれば、シンクが濡れてるのも嫌な人もいるし」



「ありますね、それ」



「春日さんは、どう?」



快浬さんに急に振られて、わたしは少し驚いた。



「わ、私ですか?」



「うん。企画の人がどんな〝終わりのライン〟持ってるか、気になる」



参加者も興味深そうにこちらを見ている。



「えっと……私は、まな板と包丁だけでも片づいてたら、〝今日の自分はまあ合格〟って思えます。最近は帰るのが遅いので」



「いいですね、〝まあ合格〟」



奥さんが笑う。



「本当は全部片づけたいんですけど、そこまで行けなくても、〝明日困らない程度で〟終われたらOKって、最近は思うようにしてて」



言いながら、自分でもその言葉に少し驚いた。

いつのまにか、
そんなふうに自分を許すルールを作っていたのだ。



「〝明日困らない程度〟って、すごくいいですね」



美桜さんが、目を輝かせる。



「今日のテーマ、〝終わりの自信〝って言葉にぴったりかも」



その言葉をきっかけに、
参加者の夫婦も、
それぞれの〝合格ライン〟を語り出した。
< 46 / 200 >

この作品をシェア

pagetop