今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜
「小春ちゃん、少しだけ時間いい?」
美桜さんが、
わたしをガラス張りのショールーム端にあるソファスペースへ誘う。
目の前には、
夕方の光に照らされたアイランドキッチン。
さっきまで生活の本音が飛び交っていたのと同じ場所とは思えないほど、
静かだった。
「さっきのインタビュー、すごく良かったね」
美桜さんは、紙コップのハーブティーを手に微笑む。
「全然そんな、まだ慣れてなくて。でも、参加者さんたちがすごく話してくださって嬉しかったです」
「それ、小春ちゃんが〝自分の話〟をちゃんとしたからだよ」
「自分の、話?」
「うん。〝まな板と包丁だけでまあ合格〟って言ったとき、あそこで一気に場がやわらかくなったの、気づかなかった?」
そう言われて振り返ると、
たしかに参加者の表情がほぐれた瞬間があった。
「生活者インタビューって、きれいごとだけじゃダメで。インタビュアー側も、ちょっとだけ自分をさらすと、相手も安心してくれるんだよね」
どこかプロっぽい口ぶりだった。
「美桜さん、インタビュー慣れてますよね」
「まあね。昔、暁の〝生活研究課〟みたいな部署で働いてたからね」
「えっ、そうなんですか」
「今は夫の会社だけど、ユーザーさんの家にお邪魔して、キッチンでの動き方をひたすら観察したりしてたよ。キッチン研究者の記事、読んだことある?」
「あ、キッチンでの行動観察のやつですよね、〝幸せになれるキッチン〟の」
「そう、それ。ああいうのにちょっと近いこと、暁でもやってた」
美桜さんは、少し視線を落とし、
それからふっと表情をやわらげた。