今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜
「お疲れさまです、今帰ってきました」
共働きの奥さんが、演技半分、
本気半分の声でつぶやきながら、
エコバッグをカウンターに置く。
冷蔵庫には、
前日に用意した〝ありそうな食材セット〟。
鶏肉、もやし、卵、少し萎びかけたピーマン。
調味料はひととおり揃っている。
——いつもの自分の台所みたい……。
わたしは、
自分もこのキッチンを使ったことがあるせいで、
妙な緊張と共感が入り混じった気持ちになる。
最初の十五分間は、
『今日はここまでライト』をオフにして観察する。
共働き夫婦のキッチンでは、
夫がご飯をレンジにかけ、
妻がフライパンで野菜と肉を炒めている。
「ねえ、明日の弁当、いる?」
「あー、どうしようかな。会議で弁当出るかも」
「出る〝かも〟が一番困るんだけど」
そんな会話が、マイクを通して記録されていく。
一人暮らしの女性は、
カット野菜をフライパンに放り込みながら、
「今日こそ、シンク空にして寝たいなあ」と、
小さくぼやいた。
わたしは、隣でメモを取りながら、
〝ぼやき〟のタイミングを赤ペンでなぞっていく。
——ここが、
〝終わらせたいけど、
まだやることが見えてる〟ゾーンだ。