今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜
シンクには、まな板、包丁、ボウル、菜箸。
『あとで洗う』を前提に重なっていく。
十五分経過の合図とともに、
快浬さんがタブレットの画面を軽くタップした。
「では、ここから〝今日はここまでライト〟をオンにします。皆さんは、いつもどおり片づけを続けてください」
シンク上の吊り戸棚の下に、
ふわりと淡い光が灯る。
足元、ゴミ箱の近くの小さなライトも、
ほんのりと呼吸するように明るさを変えはじめた。
「え、なにこれ?」
一人暮らし女性が、思わず手を止める。
「今のタイミングまでの〝動き方〟を見て、〝ひとまずここまでできていれば、明日の朝が地獄にならないライン〟を、システムがざっくり判断しています」
わたしが簡単に説明する。
「つまり、〝ここまでやれたら今日の自分を褒めていいですよ〟っていう合図です」
「へえ……」
半信半疑のまま、参加者たちは動きを続ける。
やがて、一人暮らし女性が、
フライパンを洗おうとして、ふと手を止めた。
「……あ、そうか」
「どうされました?」
「この光、〝シンクを空っぽにしろ〟って言ってるんじゃないんですね」
彼女は、
シンクの中の食器を一瞥《いちべつ》し、
水を張ったボウルに全部入れた。
「〝ここまで浸けておけば、明日困らない〟ってライン?」
わたしの胸が、きゅっとなる。
「そう、それです」
「じゃあ、今日はここでやめよ」
彼女は、蛇口を止め、シンクの縁を軽く拭いた。
その瞬間、吊り戸棚の下のライトが、
ほんの少しだけ明るくなり、
それから静かに落ち着いた光に戻る。
「……え、今光、変わりました?」
「〝ここまででOK〟の条件を満たしたので、小さく〝お疲れさま〟って言ってます」
参加者が、思わず笑う。
「かわいいな、これ」