今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜
そこに立っていたのは、
わたしが想像していたイメージより、
ずっと若く、そして鋭い青年だった。
黒に近いダークグレーのシャツ。
ネクタイはせず、第一ボタンだけ外している。
グレーのスラックスはラインがきれいで、
足元の革靴はよく手入れされていた。
整った輪郭に、少し長めの前髪。
だが何より印象的なのは、その目だった。
黒曜石のように暗く、澄んだ瞳。
こちらを一目見ただけで、
観察し、評価し、
必要なら切り捨てることも厭わないような冷静さ。
「商品開発本部長の久遠快浬です」
名乗りの声は、
静かで抑揚が少ない。
それなのに、
不思議と周囲の空気を引き締める力があった。
社長が、どこか誇らしげな眼差しで紹介する。
「私の息子であり、次期社長候補です。社内では〝キッチン王子〟なんて呼ばれているらしいがね」
〝キッチン王子〟。
わたしの脳裏に、
一瞬だけバラエティ番組に出てくるような、
きらきらした二世タレントの姿が浮かんだ。
だが、目の前の快浬さんは、そのどれとも違う。
「いらない呼び名です」
快浬さんは、父の軽口を即座に切り捨てた。
声の調子は変わらない。
けれど、その一言には、
妙にリアルな嫌悪感が混じっていた。