今日はここまで、ここから一緒に〜君と作る未来〜
「春日さん。今日から商品企画部に入られると伺いました」
「は、はい。そうです。前職では、インテリア系のスタートアップで——」
「履歴書は拝見しました」
快浬さんは、無表情のままわたしを見つめる。
その視線は、
じっとりと粘りつくようなものではなく、
むしろ極端にドライだった。
年齢、姿勢、声の調子。
わずかな仕草を一瞬でスキャンし、
頭の中で何かのチェックリストを埋めていくような、
そんな目。
わたしは、
自分が書いた履歴書の一文をふと思い出す。
『得意分野:収納設計。趣味:部屋の片づけ。※料理はあまり得意ではありませんが食べることは得意です』
最後の一文を入れるかどうか、最後まで迷った。
インテリアスタートアップ時代、
キッチン収納プランは誰より褒められたのに、
試作会で自分が作った料理は、よく同僚に笑われた。
『春日、フライパンの火、強すぎ!焦げてる』
『コンロぴかぴかに磨いて綺麗なんだけど、料理の見栄えが悪いとか勿体無い』
悔しくて、でもどこか自分でも納得もしていた。
――私は〝作る天才〟にはなれないかもしれないけど、
〝片づけて心が落ち着く場所〟なら提供することができる。
キッチンメーカーに来たのに料理が得意ではない、
という事実がほんの少しだけ心残りだった。
けれど同時に、
だからこそ見える景色もあると信じたい。
——片づけが終わったとき、
ほっとできるキッチンなら、私にだって語れる。
わたしはそっと拳を握り、自分を勇気づけた。