余所者-よそもの-【 2 】

57話:残響




日が落ちるのがずいぶん早くなった。
もう、秋口なんだ。

湿った風を肌に浴びて、ひとつ背伸びをする。


リンコの契約が決まってからというもの、AnBarは少し浮足立っていた。

「リンコさんのお店、楽しみですね」

ほとんど毎日、そんな話をしてる気がする。

新しい店ができる。
新しい仲間が増える。

話が具体になるにつれて、近い未来にワクワクが止まらなかった。


時刻は二十時。
表看板を出して、マットを敷けば、それが開店の合図。

中に戻ろうと、ドアに手をかけた、その時。


――ずり、ずり、と、足底を軽く擦る音がした。


振り返れば、長い黒髪の女性が、まっすぐこちらに向かって歩いてくる。

……お客さんかな?


縮まった距離。
目当てはこの店だ、と判断がつくなり声をかけた。


「おひとりですか?」

女性は、静かにゆっくりと頷いた。


「いらっしゃいませ」


私は女性を案内しながら、店内へと入る。


見慣れないお客さんだった。
きっと、初めての来店。

私は「こちらにどうぞ」とカウンターの隅から二番目の席に案内した。

おしぼりを出し、立てかけてあったドリンクメニューをテーブルの前に置く。

< 237 / 285 >

この作品をシェア

pagetop