余所者-よそもの-【 2 】
57話:残響
日が落ちるのがずいぶん早くなった。
もう、秋口なんだ。
湿った風を肌に浴びて、ひとつ背伸びをする。
リンコの契約が決まってからというもの、AnBarは少し浮足立っていた。
「リンコさんのお店、楽しみですね」
ほとんど毎日、そんな話をしてる気がする。
新しい店ができる。
新しい仲間が増える。
話が具体になるにつれて、近い未来にワクワクが止まらなかった。
時刻は二十時。
表看板を出して、マットを敷けば、それが開店の合図。
中に戻ろうと、ドアに手をかけた、その時。
――ずり、ずり、と、足底を軽く擦る音がした。
振り返れば、長い黒髪の女性が、まっすぐこちらに向かって歩いてくる。
……お客さんかな?
縮まった距離。
目当てはこの店だ、と判断がつくなり声をかけた。
「おひとりですか?」
女性は、静かにゆっくりと頷いた。
「いらっしゃいませ」
私は女性を案内しながら、店内へと入る。
見慣れないお客さんだった。
きっと、初めての来店。
私は「こちらにどうぞ」とカウンターの隅から二番目の席に案内した。
おしぼりを出し、立てかけてあったドリンクメニューをテーブルの前に置く。