余所者-よそもの-【 2 】
42話:伝言ミス
どれだけ祈っても、願っても。
時間は止まることなく、週末が再び訪れた。
バンに罵倒を浴びせられながら、機械的に開店準備をこなす。
買い出しだけが仕事中の憩いで、いつもより余計に時間をかけて店に戻った。
するとAnBarの前。軒先に誰かが立っている。
「あら。カナコ」
そう艶やかに微笑んだのは、今日もジュエリーのようなリップを輝かせるリンコだった。
「ちょうど良かった。お店入れてくれない?」
リンコは挨拶もそこそこに、AnBarに入れてくれという。
だけど今はまだオープン前。
看板も出していないし、中の準備もきっと終わっていない。
「その、少し待ってもらえますか?まだ開店時間じゃなくて」
「そんなのいいわよ」
「え?」
リンコはカツ、カツ、とヒールの高い音を響かせると、AnBarのドアを押し開き。
入口前に放置されているドアマットや電飾看板を器用に避けて通った。
「リンコさん?ちょっと、ちょっと待ってください!」
入れてくれと言ったくせに、焦る私も無視でフロアに続く通路を迷いなく進んでいく。
リンコの後ろを追う形でフロアに入れば、案の定そこはまだ準備中の状態。
煌々と明るく黄色い照明の中。テーブルに灰皿を並べていたバンと、掃除機をかけていたサンコンが目を丸くしてこちらを振り返った。