余所者-よそもの-【 2 】
どうしよう。
何も言えないままで居ると、サンコンが掃除機のスイッチを切ってこちらに駆け寄ってきた。
「まだ準備中でして」
「だから何?」
「はい?」
「客じゃないから。いいでしょ?」
サンコンはじっとリンコの顔を眺めて、やがて「あ」と何か気付いたように零した。
「アタシはリンコ。ユキちゃんから何も聞いてないの?」
「失礼しました」
「案内して頂戴」
「はい」
態度を一変させたサンコンは頭を下げ、フロア奥のソファ席へとリンコを案内する。
一体、どういうこと?
そこからはとても慌ただしかった。
サンコンはオーダーを取り、ドリンクを用意する。
バンはリンコに曲の好みを聞き出し、レゲェ調のメロウなラブソングをBGMに設定。
私は照明を営業用に切り替え、出しっぱなしだった掃除機やマット類を片付けて見た目だけでも開店した状態に整えた。
一通りのセッティングを終えても、サンコンは落ち着かない様子のまま「私はユキに連絡を入れてきます」と言い残し、バックヤードに消えた。
……リンコとユキは、どういう関係なんだろう。
そんなことを考えながら、やり残していたフロアの準備をしていた。
「カナコ」
ふいに、リンコに呼ばれたので、小さく返事をしてからテーブルの前に立つ。
「一緒に飲みましょうよ」
リンコは妖しく微笑みながら、自分の座っている隣をポンポン、と叩いた。