余所者-よそもの-【 2 】
一人、取り残された更衣室。
幸い、ガラス片に触れているのは手だけ。
これ以上ガラス片に触れてしまわないように、そっと慎重に起き上がった。
「……っう」
手のひらに突き刺さった透明のガラス片。
皮膚にめり込んだ異物に、ぞわぞわとしたものが頭の先までせり上がる。
一つ、指先でそっと破片をつまんで肌から引き抜くと、真っ赤な血がぷっくりと顔を出した。
幸いだったのは割れたのがタンブラーグラスだったことだ。
分厚いガラスは肌の奥までは入り込まず、傷はそれほど深くなかった。
いくつかのガラス片を全て取り除くと、今度は強烈な倦怠感に襲われた。
手の甲を額に立てると、どうやら熱があるようだった。
昨日からどうも熱っぽかった。
吐き気はするし、頭は痛いし、目は霞むし。
『表でてくんな』と言ったバンの言葉通り、今日は休ませてもらおう。
私はガラス片の落ちていない場所まで、少しだけ移動して、ロッカーを背もたれにして床にへたり込むように座った。
――『もういい加減、ここ出てけっつってんだよ!』
ごめん、バンくん。
それからユキさん、サンコンさん。
どれだけ邪魔だと疎まれても。
迷惑をかけても。
それでもやっぱり、私はまだ、ここに。
AnBarに居たい。
元気になったら、みんなにどう謝るか考えよう。
今はちょっとだけ、休ませて。