愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた
引き攣った悲鳴をあげようとしたエリシアの口は、ザカリアスの手で塞がれた。恐怖のあまりまともに息が吸えず、掠れた悲鳴のような声だけが漏れる。
「しーっ。淑女たるもの、あまり大きな声を出してはいけませんよ」
「嫌……っ! 誰か……」
懸命に振り絞った声は、今にも消え入りそうなほどに頼りない。荒い呼吸だけが、馬車の中に響いた。
にっこりと目を細めたザカリアスは、胸元から小さな瓶を取り出した。そして蓋を開けるとエリシアの口元に持ってくる。
「大丈夫、何も怖いことはない。これは、エリシアを自由にするためなんだから。さぁ、これを吸って」
「ぃ……や……っ」
近づけられた小瓶からは、つんと鼻をつくような刺激臭がする。吸い込んではならないと思うのに、いつまでも息を止めていることはできない。
なるべく息を吸わないようにしてみても、徐々に目の前の景色がぐらぐらと揺れ、頭がぼうっとしてくる。
目を開けていられなくて、目蓋が勝手に閉じてしまう。完全に目を閉じてしまう直前、ドレスの水色がやけに鮮やかに目に映った。その瞬間、エリシアは思い出した。
今日は、あの惨劇のあった日だ。あの日も、前日に大雨が降っていた。
エリシアがこのドレスを選んでしまったのは、やはり運命は避けられないからなのだろうか。
「……リ、……オ……」
愛する人の名をつぶやきながら、エリシアは堪えきれずに意識を手放した。
「しーっ。淑女たるもの、あまり大きな声を出してはいけませんよ」
「嫌……っ! 誰か……」
懸命に振り絞った声は、今にも消え入りそうなほどに頼りない。荒い呼吸だけが、馬車の中に響いた。
にっこりと目を細めたザカリアスは、胸元から小さな瓶を取り出した。そして蓋を開けるとエリシアの口元に持ってくる。
「大丈夫、何も怖いことはない。これは、エリシアを自由にするためなんだから。さぁ、これを吸って」
「ぃ……や……っ」
近づけられた小瓶からは、つんと鼻をつくような刺激臭がする。吸い込んではならないと思うのに、いつまでも息を止めていることはできない。
なるべく息を吸わないようにしてみても、徐々に目の前の景色がぐらぐらと揺れ、頭がぼうっとしてくる。
目を開けていられなくて、目蓋が勝手に閉じてしまう。完全に目を閉じてしまう直前、ドレスの水色がやけに鮮やかに目に映った。その瞬間、エリシアは思い出した。
今日は、あの惨劇のあった日だ。あの日も、前日に大雨が降っていた。
エリシアがこのドレスを選んでしまったのは、やはり運命は避けられないからなのだろうか。
「……リ、……オ……」
愛する人の名をつぶやきながら、エリシアは堪えきれずに意識を手放した。