愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた

 それを見て、ザカリアスは楽しげに笑うとベッドに腰かけた。彼の重みでベッドがぎしりと軋む。

「どうして逃げるんだい、エリシア。ようやく二人きりになれたのに。笑ってよ」

「や……っ、来ないで」

 必死に顔を背けるものの、ザカリアスが手を伸ばし、頬をなぞった。それだけで、吐き気を催すほどの嫌悪感を覚える。

「エリシアはまだ混乱しているだろうから、しばらく手はこのままにしておこうね。暴れて怪我をされたら困るからね。大丈夫、ここは安全だよ」

「嫌、離して……っ」

 震えるエリシアに構うことなく、ザカリアスは機嫌よさそうに部屋の中を見回した。

「少し古いけど、いい部屋だろう? おれたちの新居だよ。ここでずっと一緒に暮らそうね」

 まるで歌うような口調で、ここは没落した貴族が所有していた別荘だと教えられる。窓の外の景色から想像はしていたけれど、森の中にあるらしい。不便な場所のために放置されていたのを、ザカリアスが安く買い取っていたのだという。

「そ、そんなこと……できるはず、ないわ。ロジェリオも……お父様だって、私がいなくなって黙っているはずないもの」

 懸命に声を振り絞れば、ザカリアスは楽しげに目を細めた。その顔はまるで、エリシアを慈しむようだ。

「あぁ、まだおれたちの仲を引き裂かれるんじゃないかって心配してるんだね。可愛いエリシア、怖がらなくて大丈夫だよ。ちゃんと準備はしてきたんだ。誰もおれたちを見つけ出すことはないよ」

「どういう……意味」

「おれたちの乗った馬車は、事故によって川に落ちてしまうんだ。天はおれたちの味方をしてくれているのか、昨日の雨で川は増水している。遺体は流されて、見つからないだろうね」
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