愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた
それだけ言って、ヴィクトルはくるりと踵を返すと自室に戻ってしまった。相変わらず愛想のない子だと内心でため息をつきつつも、今日は久しぶりにたくさん会話をしたような気がする。昔みたいに笑ってはくれないけれど、弟が家族のことを大切に思っているのは分かっている。学業がどんなに忙しくても食事は必ず家族一緒にとるし、父親とはよく話をしている。エリシアが結婚して家を出ても、ヴィクトルがいればファリノス伯爵家は安泰だなと思う。
階下に降りたエリシアは厨房に向かい、料理人とお茶菓子の打ち合わせをした。ロジェリオはあまり甘いものが得意ではないので、チーズを使ったクッキーなども用意してもらうことにして、ついでに自分の好物であるマカロンも作ってもらうようちゃっかりと頼んでおいた。
柑橘を使ったお気に入りの茶葉を準備してもらうよう依頼し、厨房を出たところでエリシアは名を呼ばれて足を止める。
「エリシアお嬢様、こちらにいらしたのですか。旦那様と奥様がそろそろ出発されるようですよ」
足早に近づいてきたのは、執事のザカリアスだった。まだ三十にもならない若さだが、有能な彼は父のお気に入りだ。数年前に前任の執事が老齢のために引退し、今ではザカリアスがファリノス家の全てを取り仕切っている。忙しいはずなのに、彼はエリシアをわざわざ探しに来てくれたようだ。
「まぁ、もうそんな時間? お見送りに行かなくちゃ」
両親は今日、観劇に行く予定なのだ。人気の演目のチケットがようやく取れたのだと、母が嬉しそうにしていた。
家族が外出をする時は、いつも見送ると決めている。きっと弟のヴィクトルも、やってくるはずだ。ザカリアスを伴って、エリシアは玄関ホールへと急ぐ。
階下に降りたエリシアは厨房に向かい、料理人とお茶菓子の打ち合わせをした。ロジェリオはあまり甘いものが得意ではないので、チーズを使ったクッキーなども用意してもらうことにして、ついでに自分の好物であるマカロンも作ってもらうようちゃっかりと頼んでおいた。
柑橘を使ったお気に入りの茶葉を準備してもらうよう依頼し、厨房を出たところでエリシアは名を呼ばれて足を止める。
「エリシアお嬢様、こちらにいらしたのですか。旦那様と奥様がそろそろ出発されるようですよ」
足早に近づいてきたのは、執事のザカリアスだった。まだ三十にもならない若さだが、有能な彼は父のお気に入りだ。数年前に前任の執事が老齢のために引退し、今ではザカリアスがファリノス家の全てを取り仕切っている。忙しいはずなのに、彼はエリシアをわざわざ探しに来てくれたようだ。
「まぁ、もうそんな時間? お見送りに行かなくちゃ」
両親は今日、観劇に行く予定なのだ。人気の演目のチケットがようやく取れたのだと、母が嬉しそうにしていた。
家族が外出をする時は、いつも見送ると決めている。きっと弟のヴィクトルも、やってくるはずだ。ザカリアスを伴って、エリシアは玄関ホールへと急ぐ。