愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた
 やがてヴィクトルは少しずつ笑顔を見せるようになり、エリシアの両親を父と母と呼び、エリシアのことを姉と慕ってくれるようになった。
 ヴィクトルは幼い頃から聡明で、王立学園に通う今も成績は常に上位だという。そのためエリシアは、優秀な弟が家を継ぐのが当然だと思っているし、両親もそう考えている。弟が学校を卒業し、成人すれば正式な養子縁組をして、ファリノス家を継ぐことになるだろう。エリシアがロジェリオと婚約したこともあり、父は最近ヴィクトルに色々と領地経営についても教えているようだ。
 幼い頃は『エリシアねえさま』と呼んでいつもあとをついて回っていたヴィクトルだったが、十三歳の時に王立学院へ入学した頃からは少し距離を感じるようになった。可愛い弟が離れていくことを寂しく思ったけれど、思春期というのはそういうものだと考えるようにしている。
 少し癖のあるふわふわとしたこげ茶の髪と深い青の瞳を持つヴィクトルは、姉の目から見ても結構整った容姿を持っている。自分は十八でロジェリオと出会ったので、エリシアはそろそろ弟に恋人や婚約者ができる日も近いのではないかと少しだけ楽しみに思っている。
 もっとも、そんなことを言えばうっとうしそうな顔をされるのは分かっているから、口には出さないけれど。
「今日、誰か来るの?」
 ぶっきらぼうに問われて、エリシアはうなずく。
「えぇ、昼からロジェリオが来るの」
「そう。邪魔したら悪いから、おれは外出していようかな」
「邪魔なんてこと、ないわ。私たちは庭の四阿でお茶をしようと思っているから、ヴィクトルは気にせず家で過ごしていて」
「うん、考えておく」
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