愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた
 あの男は、エリシアをどこかに連れて行こうとしていた。『愛するエリシア』をどこかに閉じ込めて、二人だけで暮らそうと考えていたようなので、誰かの手を借りるとは考えにくい。
「ヴィクトルが犯人だとしたら、使用人であるザカリアスは従うかしら。でも、その前にお父様へ報告が上がるわね。ザカリアスが犯人だとしても、ヴィクトルが協力するとは思えないし……。やっぱり、共謀説はないわね」
 ため息をついて、エリシアはゆっくりと身体を起こす。あらためて胸元を確認すれば、やはりそこには傷跡がある。
「どちらにしても、二人と距離を置くしかないわ。万が一にも、愛し合っていたなんて勘違いを起こさせないように」
 決意を込めてつぶやき、エリシアは拳を握りしめた。
 そして、深い息を吐いて頭を抱える。
「ロジェリオと出会ったのは、私が十九の誕生日を迎えて最初に参加した夜会だったわ。私はそこに、絶対に出席してはならない。どんな理由をつけてでも、欠席しなくちゃ」
 エリシアがロジェリオと出会わなければ、彼が死ぬという未来を変えられる。
 ――そのせいで、彼が別の人と出会っても。
 心の中でつぶやいて、エリシアは滲んだ涙を堪える。
 公爵家令息であるロジェリオは、見た目も地位も申し分ない。多くの女性が彼に憧れていたことは知っているし、その中から誰か素敵な人と出会うだろう。
 愛する人が生きていてくれるなら、その隣にいるのが自分でなくても構わない。
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