愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた
 淡い水色のドレスは、胸元に施された刺繍が華やかなものだ。ぴったりと身体に沿う上半身のデザインは、華奢ながら豊満なバストを持つエリシアの女性らしい身体を際立たせたし、ふんわりと広がったスカート部分に縫いつけられたビーズが、動くたびにきらきらと輝いていた。スタイルがよく見えるようにと少し高めのヒールの靴を履いたエリシアは、いつもより大人びて見えると自分でも満足していた。
 とはいえ、そう簡単に出会いなどあるわけもない。こちらを気にするような視線を向けられることはあるものの、話しかけてくる人はいなかった。
 今夜はこのまま壁の花で終わるかもしれないと思いつつ、友人と談笑しているだけでも楽しめる。その時、突然会場内がざわついた。誰か、有名な人が来たようだ。皆が見つめる先には、見目麗しい一人の男性の姿。それがロジェリオ・アルベルダ公爵令息であることが、人々の囁きから分かった。
 由緒ある公爵家の嫡男で、あの美貌。文官として働く彼はとても優秀で、将来は宰相間違いなしと言われているらしい。二十歳を過ぎてもまだ婚約者のいない彼の隣を、多くの令嬢が狙っている。
 めったに夜会に顔を出さないロジェリオが来たことで、周囲の令嬢たちが一斉にそわそわとし始めた。
 確かに見惚れるほどの美貌だわと思うものの、さすがに手の届く相手でないことはエリシアだって分かっている。
 ダンスを一緒に踊ってほしいと群がる令嬢たちの行動力を、すごいなぁと尊敬の眼差しで見つめるエリシアは、自分はそこに混ざれる気がしなかった。
 ロジェリオは、ほとんど表情を変えずに令嬢たちをあしらっている。どうやら誰とも踊る気はないらしい。その様子を見るともなしに眺めていたエリシアの隣で、友人が顔見知りの男性からダンスの誘いを受けた。
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