愛するあなたを殺させないため、死に戻った私はこの恋を捨てると決めた
 ロジェリオと出会ったことは、話すつもりはない。彼と踊ったことが噂になるかもしれないけれど、その時はあの場限りだったのだと言うしかないだろう。もう二度と、会うつもりはないのだから。
 ソファに腰を下ろすと、斜め向かいに座ったヴィクトルがじっとエリシアを見つめていた。決して目を合わさないようにと、意識して父親の方を向いていると、ヴィクトルが軽く身を乗り出した。
「姉さん、少し顔色が悪く見えるけど。夜会で何かあったんじゃないの?」
「な、何もないわ。人が多かったら、少し疲れてしまっただけよ」
「ふぅん。夜会に参加すれば出会いがあるかと思っていたけど、そうでもないんだね」
「ヴィクトルも、卒業したら本格的に夜会へ顔を出さねばならないからな。今のうちにエリシアのパートナーとして参加しておくのもいいかもしれない」
 父親のとんでもない提案にエリシアは内心ひやひやとしていたけれど、ヴィクトルは興味がなさそうに「考えておく」とだけ言っていたのでほんの少しだけホッとする。ロジェリオを殺したのが弟か執事か分からない今、彼らと二人きりになる環境はできるだけ避けたい。

 翌日、夜会の疲れからかいつもより寝坊してしまったエリシアは、欠伸を噛み殺しながら食堂へと向かっていた。
 前から誰かが歩いてくると思ったら、執事のザカリアスだ。彼は何故か、大きな花束を抱えている。
「おはようございます、エリシアお嬢様。お嬢様に宛てて、このような贈り物が届いておりますよ」
「え……私に?」
「えぇ、送り主はアルベルダ公爵令息……お手紙も添えられているようです」
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